除染作業におけるはつ土板プラウ耕の耕深と表層土埋没深さとの関係
要約
はつ土板プラウで耕深約20~45cmの反転耕を行う時の、表層土(地表から深さ3cmまで)が埋没される耕起土沈下後の平均深さは耕深の約2/3、表層土の90%以上が埋没される耕起土沈下後の深さは耕深の約1/2である。
- キーワード:はつ土板プラウ、反転耕、放射性物質、除染、表層土、埋没
- 担当:農業機械化促進・環境負荷低減技術
- 代表連絡先:電話 048-654-7000
- 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・企画部、生産システム研究部、評価試験部
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
東京電力福島第1原子力発電所の事故による放射性物質による農地の汚染が大きな問題となっている。主な汚染物質である放射性セシウムは、耕うんを行わない限り、長期間ほ場表層に留まることが知られており、作土中の放射性セシウム濃度が比較的低い農地では、反転耕の実施により、空間放射線量を低下させるとともに、農作物への放射性セシウムの移行を低減させる効果が期待できる。そこで、除染作業時のプラウ耕およびその後の整地作業時、次回以降の耕うん時の耕深設定の参考にするため、はつ土板プラウ耕の耕深と表層土埋没深さの関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 14インチ3連と22インチ1連のはつ土板プラウ(図1、表1)を供試し、黒ボク土と灰色低地土の普通畑(表1)において、20cmから45cmの範囲で耕深を変え、地表から深さ3cmまでの表層土(以下「表層土」とする。)の埋没深さを調査した情報である。
- 表層土は、れき溝壁から1り体当たり耕幅の2倍程度側方に、3~10cm程度の厚さですき込まれる(図2)。
- 耕起直後の土は膨軟な状態で堆積されるが、プラウ耕後の整地作業と時間の経過で、作物の生育時には耕起前の地表面位置付近まで沈下するものと推定される。沈下後の表層土平均埋没深さは耕深の約2/3であり、耕深20cmで12cm程度、耕深30cmで20cm程度、耕深40cmで28cm程度、耕深45cmで32cm程度である(図3)。
- 表層土の90%が埋没される耕起土沈下後の深さ(10パーセンタイル値)は、耕深20cmで8cm程度、耕深30cmで15cm程度、耕深40cmで22cm程度、耕深45cmで25cm程度であり(図3)、プラウ耕後の整地および2作目以降における耕うん時の耕深は、プラウ耕深の4割程度以下とするのが望ましい。
- ほ場表面の残さを埋没させるためのアタッチメントであるジョインタを取付けた場合、埴壌土の灰色低地土のような粘質なほ場では表層土埋没深さを深くできるが、壌土の黒ボク土のような比較的崩れやすく、ジョインタでの土放てき距離が小さくなるほ場では効果が低い。
普及のための参考情報
- 普及対象:放射性物質による汚染農地のうち、作土中の放射性セシウム濃度が5,000~10,000Bq/乾土kgの農地の一部と、同濃度が5,000Bq/乾土kg以下で対策が必要な農地(2011年9月14日に農林水産省から出された「農地土壌除染技術の適用の考え方」)。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:普及予定地域は上記1.の農地。作土中の放射性セシウムが5,000Bq/乾土kgを越える農地の推定面積は8,300ha(農林水産省)。
- その他:農林水産省の「農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)作業の手引き」の作成に、本情報が利用されている。
具体的データ
(後藤隆志)
その他
- 中課題名:環境負荷の低減及び農業生産資材の効率的利用に資する農業機械の開発及び評価試験の高度化
- 中課題番号:600b0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011年度
- 研究担当者:後藤隆志、落合良治、小林研、重松健太、松尾陽介、手島司、清水一史、西川純、吉野知佳、スガノ農機(株)