カセットボンベのブタンを燃料とする小型農業機械の安全要件

要約

カセットボンベのブタンを燃料とする歩行用トラクターや刈払機等の小型農業機械を対象とした安全要件であり、カセットボンベが直射日光をうけることないようカバーを設けること、適切なカセットボンベの保持方法をとること、燃料配管等高圧部の耐圧性を確保することなどを求める。

  • キーワード:ブタン、安全要件、カセットボンベ、ボンベ保持部、燃料配管部
  • 担当:農業機械化促進、農作業安全
  • 代表連絡先:電話 048-654-7000
  • 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・評価試験部
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

歩行用トラクター(以下、歩トラ)や刈払機などで、カセットボンベ(以下、ボンベ)の液化ブタンを気化し、そのガスを燃料とする機関(ガス機関)を搭載した小型農業機械の普及が進んでいる。そこで、カセットこんろ用燃料容器のJIS規格やガス機関を搭載した自動車の技術的要件を定めた保安基準(以下、保安基準)などを調査・検討するとともに、対象機械の構造や使用時の状況を試験・調査して、その安全性を確保するための要件を明らかにする。また、この要件は農業機械安全鑑定の基準に導入する。

成果の内容・特徴

  • この安全要件は、ガソリンや軽油を燃料とする機関を搭載した従来型農業機械とは異なるボンベ、ボンベ保持部、燃料配管部を対象としたものであり、対象機種は基本構成が同じ歩トラと刈払機である。
  • ボンベの安全要件として、ボンベが直射日光を受けることないようカバーを設けることや、機械使用時・ボンベ保管時の上限温度を安全標識や取扱説明書へ記載して注意喚起することを求める。
    カバー無しのむき出しのボンベでは、市販機(歩トラ)のカバー有りのものと比べ、直射日光の影響によりボンベの表面温度が高くなる(図1、表)。このため、保安基準の細目を定める告示(以下、細目告示)第20条(高圧ガス燃料装置)五に定められている「カバーを設けること」が必要である。
    また、温室内では、ボンベの表面温度が80°C以上(ボンベ内の蒸気圧は推定1.0MPa以上(図2))に上昇する場合があり(表)、条件によっては更に高温・高圧となる場合も想定される。このため、同形式のボンベを用いるカセットこんろ用燃料容器の規格JIS S2148に規定されているボンベの耐圧基準1.3MPa(変形)、1.5MPa(破裂)に達することがないような温度でボンベを使用・保管する(図2)よう求めることが必要である。
  • ボンベ保持部の安全要件として、「片持ちにしない」などの適切なボンベ保持方法の採用を求める。
    ボンベ自体は使用1時間程度で交換がなされるため問題はないが、本機のボンベ保持部は稼働により振動を受け続けるため、振動の影響によるボンベ保持部の損傷、劣化がないように、適切なボンベ保持方法をとる必要がある。
  • 燃料配管部を対象とした安全要件として、燃料配管等高圧部の耐圧性を確保することを求める。
    市販機(歩トラ)では、燃料気化部(液化ブタンを気化しブタンガスとする)の温度が125°C程度まで上昇する場合があり(図3)、この時燃料配管内の蒸気圧が2.3MPa程度の高圧となることが想定される(図2)。このため、細目告示20条九に定められている「機械毎に想定される圧力以上の高圧に耐えられる強度を確保すること」が必要である。
  • その他の安全要件として、格納時の燃料もれなど不測の事態を考慮して、機械を使用しない場合にボンベを取り外すことを安全標識や取扱説明書へ記載し、注意喚起することを求める。

普及のための参考情報

  • 普及対象:農業機械メーカー
  • 普及予定地域、普及予定面積、普及台数等:基準の対象となる出荷台数、約5000台/年
  • その他:本安全要件は、2014年度より安全鑑定基準に導入されている。このことでカセットボンベのブタンを燃料とする小型農業機械(歩トラ、刈払機)の安全性が確保される。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:農作業の安全に資する農業機械の開発及び評価試験の高度化
  • 中課題整理番号:600c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:清水一史、西川純、塚本茂善、皆川啓子、原田一郎
  • 発表論文等:生研センター(2014)「カセットガスを燃料とする農業機械の安全鑑定での取り扱い」平成26年度農機具型式検査及び農業機械安全鑑定等に関する説明会資料