自脱コンバインの省エネルギー性能評価試験方法

要約

機関出力35kW(47PS)程度の4条刈自脱型コンバインに適用し、30aの収穫作業を行うときの燃費を算出する方法である。試験ほ場の籾の収量や含水率、ほ場表面の硬さなどの違いによる燃費への影響を補正することで、省エネルギー性能を客観的に比較・評価できる。

  • キーワード:自脱コンバイン、燃費、測定法、水稲、省エネルギー
  • 担当:農業機械化促進・環境負荷低減技術
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・評価試験部・作業機第2試験室
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

温室効果ガス削減に寄与する省エネルギー(以下「省エネ」)型農機へのニーズが高まるなか、各種農業機械の省エネ性能評価手法の確立が望まれている。自脱コンバインによる水稲収穫時の燃費は、一定面積を刈取ったときの消費燃料を計測する、満タン法と呼ばれる方法が一般的に用いられるが、この方法では、作物条件やほ場条件の違いによる影響が排除できず、客観的に比較可能な性能を評価・表示することはできない。そこで、試験条件の違いによる影響の補正を行い、自脱コンバインの省エネルギー性能を客観的に評価・比較する方法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 本試験方法は、自脱型コンバインで30aの収穫作業を行ったときの燃費(対象水稲品種:コシヒカリ)を推定する方法である。供試コンバインは4条刈で、機関出力35kW(47PS)である。
  • 本試験方法では、走行速度を変えた1行程40~50mの刈取および空走(ほ場及び路上で直進、旋回)、籾排出を行い燃料消費量を測定する。ほ場での空走は、タンク内籾量を変え実施する。
  • 測定した燃費と試験条件をもとに、標準条件で収穫を行った場合の要素燃費を推定し求める。要素燃費(図1)は、直進刈取燃費(=刈取脱穀・選別処理燃費(以下、刈取燃費)+走行・駆動燃費)、旋回燃費、移動燃費及び排出燃費で構成され、後述の30a収穫燃費を算出するシミュレーションに用いる。
  • 本試験方法では基準機を定め、重回帰式により基準機の刈取燃費を推定する。これを供試機に適用するに際しては、同一試験条件における基準機と供試機の刈取燃費の関係を求め、標準条件のときの基準機の値から標準条件のときの供試機の値を導出することとする。刈取条数や作業速度を種々変えた刈取試験(7試験区×2反復)の作物・作業条件を上記式の変数X1~X5に代入することで、基準機が上記条件で試験したときの刈取燃費の推定データが14個得られ、これと供試機の実測刈取燃費との間の回帰式を導くことができる。これによって基準機と供試機の刈取燃費の差を補正する(図2)。走行・駆動燃費、移動燃費及び旋回燃費はほ場条件による補正係数を乗じて、排出燃費は実測燃費と籾質量との関係から求める。この補正した刈取燃費、及びその他の要素燃費をもとにシミュレーション(図3)することによって、標準条件時における供試機の30a収穫燃費を算出することができる(表1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:農業機械メーカー、農業関係団体
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:省エネ性能認証試験実施型式数4型式/年
  • その他:本方法は、一般社団法人日本農業機械化協会が実施する「農業機械の省エネルギー性能認証表示制度」の省エネルギー性能の試験評価方法に採用される予定である。

具体的データ

図1~図3,表1

その他

  • 中課題名:環境負荷の低減及び農業生産資材の効率利用に資する農業機械の開発及び評価試験の高度化
  • 中課題整理番号:600a0
  • 予算区分:交付金、その他外部資金(その他)
  • 研究期間:2014~2015年度
  • 研究担当者:堀尾光広、山﨑裕文
  • 発表論文等:一般社団法人日本農業機械化協会「平成27年度農業分野におけるCO2排出削減促進検討事業報告」(2016年3月)