4輪駆動トラクタ-へのウェイト装着によるけん引耕起作業時の燃料消費量の低減

要約

4輪駆動の農用トラクターにフロントウェイトを取付けると、けん引耕起作業時の進行低下率が安定して低くなり、作業面積当たりの燃料消費量を低減できる。

  • キーワード:農用トラクター、フロントウェイト、けん引耕起作業、進行低下率、燃料消費量
  • 担当:農業機械化促進・環境負荷低減技術
  • 代表連絡先:電話 048-654-7000
  • 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・評価試験部
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年増加傾向にある大規模農家の経営上、温室効果ガスの排出削減上、燃料消費量の低下が重要である。近年わが国では、高速作業が可能なトラクターけん引式の耕起用作業機(チゼルプラウ、スタブルカルチベータ等)による作業が増加している。トラクターによるけん引耕起作業では、車輪のすべりと沈下により変わる進行低下率が増加すると作業速度が低下して面積当たりの燃料消費量が増大する問題がある。これを改善する方法として、トラクターの前方に重錘(フロントウェイト)を取付けることが推奨されているが、どの程度省エネルギ効果があるかの例については公表されていない。そこで、4輪駆動トラクターでのけん引耕起作業におけるフロントウェイトの装着が進行低下率と燃料消費量に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 74kWの4輪駆動トラクター(表1・図1の「けん引トラクター」)に270kgのフロントウェイトを取付けた状態とウェイトを取外した状態で、比較的水分が均一な水稲収穫跡の未耕起水田(表1)において、図1の「被けん引トラクター」にスタブルカルチベータ(表1)を装着し、けん引抵抗測定用のロードセルが組込まれたけん引桿を介して作業機付きの前記被けん引トラクターをけん引して、両区でけん引抵抗が同程度となるように4輪駆動で耕起作業を行い(図1)、進行低下率、燃料消費量等の例を測定した情報である。
  • フロントウェイト270kgの装着により、装着しない時に比べ接地圧の増加により、進行低下率の平均値と変動が低下する。フロントウェイトの装着により、4輪駆動トラクターの進行低下率を安定して低くできる(図2)。
  • フロントウェイトの装着時には、装着しない時に比べ進行低下率の増大抑制により、4輪駆動トラクターの作業速度(作業能率)の低下を防ぐことができる。そのため、作業面積当たりの燃料消費量を少なくできる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 4輪駆動トラクターでけん引耕起作業を行う場合の、フロントウェイトの有無による進行低下率や燃料消費量の違いの例を知るための情報として活用できる。
  • 本情報は、粘質な未耕起水田(乾田)における試験結果の例を示したものであり、異なる土壌条件ではウェイトの装着効果が違ってくる可能性があるので、注意が必要である。また、トラクターの種類やウェイトの装着量によっても効果が異なる可能性がある。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:環境負荷の低減及び農業生産資材の効率的利用に資する農業機械の開発及び評価試験の高度化
  • 中課題整理番号:600b0
  • 予算区分:交付金、外部資金(平成27年度農業分野におけるCO2排出削減促進検討事業)
  • 研究期間:2014~2015年度
  • 研究担当者:紺屋秀之、後藤隆志、藤井桃子、清水一史、西川純、滝元弘樹、梅野覚
  • 発表論文等:(一社)日本農業機械化協会(2016)「農業機械の省エネ利用マニュアル-平成27年度改訂版」(2016年公開予定)