絞り花色をもつ芳香性ツバキ'姫の香'
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要約
ツバキ品種‘小紅葉’とヒメサザンカとの種間交雑により、白地にピンクの縦絞りの入る花色をもつ芳香性ツバキを育成した。本品種は、生育が旺盛で、高い挿し木発根性をもつ。
- キーワード:ツバキ、ヒメサザンカ、種間雑種、芳香性、斑入り
- 担当:花き研・生理遺伝部・遺伝育種研究室
- 連絡先:電話029-838-6814、電子メールmshibata@affrc.go.jp
- 区分:花き
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
わが国ではツバキ属植物について、ヤブツバキ(いわゆるツバキ)とサザンカがよく利用されている。ツバキ属内では幅広い種間交雑が可能であり、これまで海外を中心に多くの種間雑種が作出されてきているが、わが国における種間雑種の利用はそれほど多くない。新しいタイプのツバキを開発することは、ツバキ類の需要拡大に直接的に役立つほか、昭和40年代以降ほとんど生産面積が伸びていない花木類の生産振興につながるものと期待される。そこで、ツバキ(Camellia japonica)と南西諸島に自生する芳香性ツバキ属野生種ヒメサザンカ (C. lutchuensis)との種間交雑により、芳香性を有し、小型で早春咲き性の新しいタイプの雑種の育成を図る。
成果の内容・特徴
- 1990年春に、旧野菜・茶試久留米支場緑化植物研究室(鹿児島県枕崎市)において、ツバキ品種‘小紅葉’を種子親、ヒメサザンカ(系統番号1118)を花粉親として交配、1990年秋に播種した。発芽後鉢上げし、1993年9月に三重県安濃圃場に定植した。
1995年春から開花が始まった。1999年に系統‘1-13’に‘姫の香’を付し、2000年~2002年の3カ年にわたり系統適応性検定試験を実施した結果、実用品種として有望と判断された。
- ツバキとヒメサザンカとの種間雑種であり、花に芳香性を有する。
- ピンク味を帯びた白地(JHSカラーチャート9701)にピンク(同左9504)の縦絞りが入る。この種間交雑では初めての斑入り花である。
- 花径5cm程度、花弁数6枚程度の極小輪の花を、頂性で着生する。
- 三重県における露地での自然開花期は1月下旬から4月下旬と極めて長い。冬季加温した施設下では、12月中旬から1月上旬に開花が集中する。
- きわめて挿し木繁殖しやすく、生育が旺盛で、挿し木3年生で着らいする特性を有することから、実用性が高い。
成果の活用面・留意点
- 新しいタイプのツバキ種間雑種で、全国のツバキ苗生産地で栽培可能である。
- 他の絞り花色を有するツバキ品種と同様に、絞り部分が拡がって全体がピンク色となった花が偏って咲く場合がある。増殖の際には全体がピンク色となった花が咲く部分からの採穂を避けるように留意する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:種間交雑等によるキク等の多収性・高品質等育種素材・系統の開発・育成
- 予算区分:交付金・遺伝資源
- 研究期間:1989~2002年度
- 研究担当者:柴田道夫、家弓実行、間竜太郎、岸本早苗、谷川奈津、小野崎隆