国内で新たに発生が確認されたカーネーションうどんこ病
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要約
国内では発生が認められていなかったカーネーションうどんこ病が、高知、長野、宮城県で発生した。本病害の発生には品種間差異が認められ、また、セキチク等、他のナデシコ属植物にも感染が確認された。
- キーワード:カーネーション、うどんこ病、Oidium dianthi、セキチク
- 担当:花き研・生産利用部・病害制御研究室
- 連絡先:電話029-838-6820、電子メールcolette@affrc.go.jp
- 区分:花き
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
近年、花き栽培は発展が見込まれる農業として、拡大傾向にある。しかし、病原微生物による花きの生育阻害に関する研究は未だ少ない。本研究では、花きの主要作物であるカーネーションに新たに発生する病害の原因を解明し、その診断、防除法構築の基礎知見を得る。
成果の内容・特徴
- 高知、長野、宮城県の施設栽培農家圃場で、カーネーションに発生した白色粉状の付着物による生育阻害は、うどんこ病によるものである(図1)。この病害の病原菌は、発生場所を問わず全て同じ特徴を有し、アメリカで報告されているOidium dianthi Jaczと同定する(表1、図2)。本邦では病原菌の完全世代は発見されていない。
- 本病害は茎葉、がく筒、花の包葉に発生し、商品価値が著しく落ちる。蕾のがくに発生すると、品種により、開花異常が生じる(図1)。
- 長野、宮城両県で発病が見られた施設では、冬季加温を行っており、初発は5月に認められている。
- 現地での発病品種は、‘ジプシー’、‘シャンペン’、‘スカーレットクイーン’、‘ホワイトバーバラ’、‘ライトピンクバーバラ’、‘ピーチインターメッツォ’、‘ボレアル’、‘ララ’、‘レニー’であり、スプレー種に多い。
- 本病原菌は、ナデシコ科のセキチク、ビジョナデシコ、キバナナデシコにもカーネーションと同様の病斑を形成するが、シュッコンカスミソウには発病しない。
- 本菌の分生子は15~30°Cで発芽し、最適温度は20~25°Cである。また、湿度は95%以上で発芽する。
- 本菌は絶対寄生菌であり、人工培養による保持が困難だが、セキチク鉢植え上での菌株の保持が可能である。
成果の活用面・留意点
- 海外でのみ発生が報告されていたカーネーションうどんこ病が、日本国内でも発生していることを確認したことにより、今後、栽培現場での防除への取り組みが期待できる。
- 本病害は1999~2002年に高知、長野、宮城県内で発生が確認されている。
- セキチク上で保持した病原菌株は今後の診断時の標準菌株として、また、抵抗性の品種間差異、防除法の開発等の基礎研究に活用できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:花きの新病害
- 研究期間:2002年度
- 予算区分:交付金
- 研究担当者:伊藤陽子、築尾嘉章、井智史、高橋尚之(高知農技セ)、瀬尾直美(宮城農園研)、
清水時哉(長野防除所)、高松進(三重大)