数種のキク科植物における黄色と橙色の花色発現に関わる色素組成

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要約

数種のキク科植物の花弁における橙色と黄色の色調の差は、おもにカロテノイド成分の違い、カロテノイド量の差およびアントシアニン量の差の3つの要素によって生じている。

  • キーワード:キク科植物、カロテノイド、アントシアニン
  • 担当:花き研・生理遺伝部・育種工学研究室
  • 連絡先:電話029-838-6813、電子メールsanae@affrc.go.jp
  • 区分:花き
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

キクの花色は主にアントシアニンとカロテノイドにより構成されている。黄色の花色はカロテノイドによるが、橙色や赤色はカ ロテノイドとアントシアニンの両方によるために、鮮やかさに欠けるほか、高温期に発色が不十分になる問題がある。ここでは、鮮明な橙色の花色を発現する数 種のキク科植物について色素組成を調べ、キクのカロテノイド生合成系に関わる遺伝子組換えによる新花色の作出に役立てる。

成果の内容・特徴

  • マリーゴールドでは両花色の間でカロテノイド量に大きな違いがみられ、橙色品種には黄色品種の約9倍のカロテノイドが含まれている(表1、図1)。
  • キクおよびガーベラでは両花色間で主にアントシアニン量に違いがみられ、キクの橙色品種には黄色品種の約28倍、ガーベラでは約15倍のアントシアニンが含まれている(表1、図1)。
  • キンセンカでは両花色間でアントシアニン量とカロテノイド量に大きな差はないが、カロテノイド成分の組成に大きな違いがみら れ、橙色品種では黄色品種にない7つのピークを示す(1~7)カロテノイド成分が含まれている。これらの7つのピークを示すカロテノイドはいずれも橙色品 種と黄色品種に共通に含まれる主要なカロテノイドであるルテイン誘導体と比較して吸収スペクトル値が30nmから50nm長波長側にあり、赤みを帯びてい た(表1、図1、図2)。
  • 以上のことより、これらのキク科植物の花弁における橙色と黄色の色調の差は、カロテノイド成分の違い、カロテノイド量の差およびアントシアニン量の差の3つの要素によって生じている。

成果の活用面・留意点

  • カロテノイドの成分組成や量を変えることにより、マリーゴールドやキンセンカのように鮮やかな橙色の花色を作出できる可能性が示され、遺伝子組換えによるキクの新花色作出などの育種に活用できる。

具体的データ

図1 材料として用いた橙色および黄色の品種

 

表1.キク,キンセンカ,ガーベラおよびマリーゴールドの橙色および黄色品種におけるカロテノイド色素量およびアントシアニン色素量の比較

 

図2 キンセンカ花弁のカロテノイド抽出物のHPLC分析

 

その他

  • 研究課題名:キクのカロテノイド生合成系酵素遺伝子の導入による花色の改変
  • 課題ID:10-01-01-01-05-03
  • 予算区分:組換え植物
  • 研究期間:2003年度
  • 研究担当者:岸本早苗、大宮あけみ、八木雅史