フロックス属花きにおける2-C-メチルエリトリトールの同定
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要約
2-C-メチルエリトリトールはフロックス属花きの主要な構成糖質であり、特に花弁に多量に含まれている。その濃度は開花にともない急激に上昇して主に液胞に蓄積し、浸透圧調節物質として花弁の細胞肥大に寄与している。
背景・ねらい
シバザクラをはじめとするフロックス属花きは花壇用および切り花用として重要であるが、糖質代謝に関する研究はほとんど行われていない。糖質は開花時の花弁の展開に重要なはたらきを有している。そこで、フロックス属に含まれている糖質を同定し、その生理的役割を解析する。
成果の内容・特徴
- シバザクラ(Phlox subulata)花弁の糖質を高速液体クロマトグラフィーにより分析したところ、グルコース、フルクトース、スクロース以外のピークが検出された。単離されたこの物質は1H-NMR、13C-NMR、CI-MSおよび比旋光度測定により2-C-メチルエリトリトールと同定された(図1)。
- 2-C-メチルエリトリトールはフロックス(Phlox drummondii)にも多量に含まれているが、フロックスと同じハナシノブ科で異属のハナシノブ(Polemonium kiushianum)では微量にしか含まれていない(データ略)。
- 2-C-メチルエリトリトールはシバザクラの花弁、葉および茎において高濃度で存在する(表1)。
- フロックスの花弁では、2-C-メチルエリトリトールは最も主要な構成糖質である。開花にともない、花弁中の2-C-メチルエリトリトール濃度は急激に上昇する(図2)。
- 2-C-メチルエリトリトールは液胞に多量に蓄積し、浸透圧調節物質として花弁の細胞肥大に寄与している(表2)。
- フロックスの転流糖質はスクロースであり、2-C-メチルエリトリトールは転流糖にはなっていない(データ略)。
成果の活用面・留意点
- フロックス属花きの糖質代謝と品質保持研究に利用できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:バラ等主要切り花花きにおける糖質の生理機能の解明
- 課題ID:10-02-03-01-09-04
- 予算区分:組換え植物プロ
- 研究期間:2003~2004年度
- 研究担当者:市村一雄、榎本博之(福井県丹生農林総合事務所)、中山真義、乘越 亮(東京農大)、
木幡勝則(野菜茶研)、山口優一(野菜茶研)
- 発表論文等:Enomoto et al. (2004) J. Plant Physiol. 161: 977-980.