キク花弁の白色の形成にはカロテノイド分解酵素が関与している

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要約

キクの白色花弁と黄色花弁を材料に用いてディファレンシャルスクリーニングを行い得られた白色花弁において発現の高い遺伝子はカロテノイド分解酵素遺伝子(CmCCD1)である。キクの白色花弁では、一旦生合成されたカロテノイドが分解されることにより白色となる。

  • キーワード:キク、カロテノイド、カロテノイド分解酵素、花弁
  • 担当:花き研・生理遺伝部・育種工学研究室
  • 連絡先:電話029-838-6813、電子メールohmiya@affrc.go.jp
  • 区分:花き
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

栽培ギクの花弁の黄色はカロテノイドによる。栽培ギクは6倍体で花色も複雑な遺伝様式を示すが、一般に白色が黄色に対して優性であ る。また、枝変わりが白色から黄色方向にのみ起こることから、カロテノイド抑制遺伝子の存在が推測されてきた。そこで、黄色花弁と白色花弁におけるカロテ ノイド蓄積の有無を決定づける要因を明らかにすることを目的に、白色または黄色花弁に特異的に発現している遺伝子のクローニングを試みた。

成果の内容・特徴

  • 白色品種‘パラゴン’と黄色品種‘イエローパラゴン’の花弁を材料に用いてディファレンシャルスクリーニングを行って得られた‘パラゴン’花弁で発現の高い遺伝子は、カロテノイド分解酵素ホモログ(CmCCD1)である。
  • CmCCD1の発現は白色花弁特異的で、黄色花弁における発現はきわめて低い(図1)。
  • ゲノミックPCRにおいて、CmCCD1のバンドは、白色花弁では検出されるが、CmCCD1の発現の低かった黄色花弁では検出されない(図1)。
  • 野生ギクのゲノミックPCRにおいて、白色花弁を持つ野生ギクではCmCCD1のバンドが検出されるが、黄色花弁を持つ野生ギクでは検出されない(図2)。
  • 以上の結果から、キクにおいて花弁におけるカロテノイド蓄積の有無はカロテノイド分解酵素(CmCCD1)が深く関わっている。
  • 枝変わりでは、CmCCD1が脱落または不活性化する事により、合成されたカロテノイドが分解されずに蓄積し、黄色になるものと考えられる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • CmCCD1遺伝子の発現を抑えることにより黄色花弁が作出できる可能性が示され、遺伝子組換えによるキクの花色改変に活用できる。
  • カロテノイドによる花色発現のメカニズムに関する新しい知見であり、黄色品種及び白色品種の育種のために広く利用できる。
  • 花弁がキメラ構造の場合、黄色花弁でもCmCCD1が発現している場合がある(図1のイエローパラゴン)。

具体的データ

図1 キクの白色品種と黄色品種の花弁におけるCmCCD1の発現量とゲノミックPCR

 

図2 野生ギクにおけるCmCCD1
          のゲノミックPCR

 

図3 突然変異によるキクの花色変異のメカニズム

 

その他

  • 研究課題名:キクのカロテノイド生合成系酵素遺伝子の導入による花色の改変
  • 課題ID:10-01-01-02-07-05
  • 予算区分:組換植物
  • 研究期間:2002∼2005年度
  • 研究担当者:大宮あけみ、岸本早苗、能岡 智、住友克彦