カーネーションうどんこ病抵抗性の品種間差異とその検定法
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要約
カーネーションうどんこ病は、花蕾がく筒への接種試験により抵抗性の品種間差異を検定でき、調査した41品種の中には抵抗性品種が複数存在する。抵抗性品種では病原菌侵入に対してパピラ形成等の抵抗反応が見られる。
- キーワード:カーネーション、うどんこ病、抵抗性検定法、品種間差異
- 担当:花き研・生育開花調節研究チーム
- 連絡先:電話029-838-6820、電子メ-ルcolette@affrc.go.jp
- 区分:花き、共通基盤(病害虫)
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
カーネーションうどんこ病は1999年の高知県での初発生以降、長野および宮城県でも発生が確認されている。本病に対する防除薬剤の登録はなく、抵抗性品種の導入による被害軽減のためカーネーション主要品種における抵抗性の品種間差異を明らかにする。
成果の内容・特徴
- カーネーションうどんこ病(病原菌:Oidium dianthi Jacz.)は、ステージに関わらず茎葉への接種では発病が難しいが、花蕾のがく筒へ病原菌胞子を筆で塗りつける方法により安定して発病する。病原菌接種後はビニール被覆し、20~25°Cに置くことで10~14日後に発病観察が可能となる。
- うどんこ病菌宮城分離株を用いて人工接種した場合、品種により発病の有無、症状の軽重が異なる。‘マレア’、‘キャンドル’、‘ピンクローランド’、‘パラス’、‘せとのはつしも’、‘ホワイトマインド’等が高い抵抗性を示し、‘ダークピンクバーバラ’、‘レッドバーバラ’、‘ライトピンクバーバラ’、‘スカーレットクイーン’等が感受性を示す(図1)。抵抗性品種は、調査した41品種中、スタンダード系、スプレー系共に存在する。ナデシコ交雑系であるソネットシリーズは調査した3品種とも中程度である。
- 抵抗性品種‘パラス’、‘せとのはつしも’、‘マレア’では、感受性品種‘ダークピンクバーバラ’、‘ライトピンクバーバラ’に比べて、がく筒表皮上での病原菌胞子の発芽率および付着器形成率が明らかに低い(表1)。また、付着器形成後、抵抗性品種はがく筒表皮細胞にパピラ*を形成するが、感受性品種では認められない(図2)。
*パピラ(papilla):植物細胞内に形成される乳頭状突起。病原菌の侵入に対して植物側が起こす抵抗反応の一つ。
- 接種試験に使用するうどんこ病菌は、セキチク類(三寸セキチク、テルスター等)の鉢植え株上で培養、維持が可能である。培養は20°C、12~16時間日長のインキュベータ内で、通年行うことができる。
成果の活用面・留意点
- 花蕾がく筒への接種により、本病に対する抵抗性の検定が可能となった。
- 花蕾への接種であるため、試験可能な時期は限られる。スタンダード系は1株あたりの花の形成数が少ないので、供試数を確保するにはより多くの株が必要である。
- 本試験は宮城分離株による結果であり、レース等が存在する場合には抵抗性検定結果が変動する可能性がある。
- 接種源の培養には過剰な湿度を避け、灰色かび病による汚染に注意する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:きく等切り花の生育・開花特性の解明と安定多収技術の開発
- 課題ID:213-g
- 予算区分:基盤研究費
- 研究期間:2005~2006年度
- 研究担当者:伊藤陽子、築尾嘉章、松下陽介