芳香性ツバキ育種素材として有望なヒメサザンカ系統

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要約

ヒメサザンカ系統および、ヒメサザンカを育種親とした芳香性ツバキの芳香に寄与する香気成分は、フェニルアセトアルデヒド、2-フェニルエタノールである。ヒメサザンカ系統36は、香気成分中にこの2成分の含有量が多く、官能的にも芳香の強い系統である。

  • キーワード:ヒメサザンカ、ツバキ、香気成分、芳香性育種素材
  • 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-6816、電子メールnamisea1@affrc.go.jp
  • 区分:花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ツバキ属の中で最も強い芳香を持つヒメサザンカ(Camellia luthuensis)は、芳香性ツバキの育種素材として使われている。花き研究所では、ヒメサザンカ系統1118を用いて芳香性ツバキ‘姫の香’を育成している。ヒメサザンカおよび、ヒメサザンカを育種親とした芳香性ツバキの芳香に寄与する香気成分を特定し、その成分が多く含まれる系統を芳香性育種素材の有望系統として選定する。

成果の内容・特徴

  • ヒメサザンカの花の主要発散成分は、安息香酸メチル(ドライフルーティ様香気)、フェニルアセトアルデヒド(ヒヤシンス様香気)、2-フェニルエタノール(バラ様香気)、ベンズアルデヒド(甘いアーモンド様香気)であり、系統ごとに組成比は異なる(図1)。
  • ヒメサザンカを育種親とした芳香性ツバキの花の香気成分は、ヒメサザンカと同じ芳香族化合物であり、品種ごとに組成比は異なる(図1)。
  • ヒメサザンカおよび芳香性ツバキ品種の芳香に寄与している成分は、標品の香りに基づくと、花様の香気を有するフェニルアセトアルデヒド、2-フェニルエタノールである。
  • 系統36は、総香気成分量およびフェニルアセトアルデヒドと2-フェニルエタノールの量と割合が多く、ヒメサザンカ14系統中最も芳香の強い系統である(図2)。
  • 以上のことから、系統36は芳香性育種素材として有望である。

成果の活用面・留意点

  • ヒメサザンカ系統36を芳香性ツバキ育種に用いることにより、芳香の強いツバキ交雑種の育成が期待できる。
  • 系統36のツバキとの交雑親和性、芳香性の後代への遺伝性を確認する必要がある。

具体的データ

図1.ヒメサザンカ系統及び芳香性ツバキ品種間の香気成分の比較

図2.ヒメサザンカ系統36

その他

  • 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
  • 課題ID:313-b
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2004~2006年
  • 研究担当者:大久保直美、鈴木一典(茨城生工研)、谷川奈津、中山真義、柴田道夫
  • 発表論文等:1)大久保ら(2007)園芸学研究 6:183-187