出荷前および輸送中のスクロースと抗菌剤処理によるバラ切り花の品質保持期間延長
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要約
出荷前およびバケット輸送中のスクロースと抗菌剤処理により、バラ切り花の品質保持期間は延長する。北海道、和歌山県および千葉県からの実送試験において、スクロースと抗菌剤による品質保持効果は確認された。
- キーワード:抗菌剤、スクロース、バケット輸送、バラ
- 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
- 連絡先:電話029-838-6801
- 区分:花き
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
バラ切り花は糖質の不足と水分収支の悪化により品質保持期間が短縮する。近年普及しつつあるバケット輸送では、輸送中に品質保持剤の処理をすることが可能である。そこで、スクロースと抗菌剤の出荷前およびバケット輸送中の処理によるバラ切り花の品質保持技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 2%または4%スクロースと抗菌剤(有効成分として5.7mg L-1 5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2mg L-1 2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび50mg L-1 硫酸アルミニウムを含む)を組み合わせた薬剤を、出荷前に10℃で24時間および輸送シミュレーション中に15℃で48時間処理することにより、バラ「ローテローゼ」切り花の品質保持期間は延長する(表1)。スクロースと抗菌剤処理により花径と新鮮重も増大する。
- バラ「サフィーア」、「シャネル」、「ニューブライダル」および「マイスノー」切り花においても、2%スクロースと抗菌剤の処理により品質保持期間は有意に延長し、花径も増大する(表2)。
- スクロースと抗菌剤の効果を実証するため、2006年9月に実際の流通ルートで北海道から東京の市場にバラを輸送した場合(平均輸送気温22℃)も、スクロースと抗菌剤処理により品質保持期間は延長した(図1)。
効果の再現性を確認するため、2007年8月と10月に北海道から輸送した場合(平均輸送気温はそれぞれ22℃と18℃)だけでなく、輸送環境が異なる和
歌山県(2007年1月実施、平均輸送気温10℃)と千葉県(2007年12月実施、平均輸送気温12℃)から実際の流通ルートで東京の市場へ輸送した場
合も同様の結果が得られた。
成果の活用面・留意点
- スクロース濃度が高く処理時の相対湿度が低いと、葉に薬害が発生する場合がある。スクロースによる薬害の発生はスクロース濃
度を2%以下とし、相対湿度を90%程度とすることで防ぐことができる。なお、「ローテローゼ」は薬害が極めて発生しやすい品種であるが、図表に提示した
実験では薬害の発生は認められなかった。
- バラ切り花を保持する環境条件は23℃、相対湿度70%、照度は事務室の明るさと同程度の約600ルクス(光合成有効光量子束密度10μmol m-2 s-1)とした。
- 本試験の結果をもとに開発された品質保持剤が、2008年よりクミアイ化学工業から産地限定的に販売される予定である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
- 課題ID:313-b
- 予算区分:高度化事業、重点強化
- 研究期間:2004~2007年度
- 研究担当者:市村一雄、湯本弘子、高濱雅幹(北海道花野菜技術センター)、鎌田展生(千葉暖地園芸研)、紺谷均(和歌山暖地園芸センター)、前田嘉洋(クミアイ化学工業)
- 発表論文等:Ichimura K. and Shimizu-Yumoto H. (2007) Bull. Natl. Inst. Flor. Sci. 7: 17-27