キク及びトレニアの形質転換に有効な翻訳エンハンサー

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要約

タバコのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’非翻訳領域配列(94bp; NtADH-5'UTR翻訳エンハンサー)は、キク及びトレニアの外来遺伝子の翻訳効率を飛躍的に向上させる。

  • キーワード:遺伝子組換え、キク、トレニア、翻訳エンハンサー
  • 担当:花き研・新形質花き開発研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-6822
  • 区分:花き
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

遺伝子組換え植物において、導入した遺伝子の働きが不十分で期待した形質が発現しない場合がある。高発現プロモーターを用いて mRNAの転写量を増加させることも解決策の一つであるが、大量のmRNAの生成に伴う遺伝子発現の抑制(RNAi)を誘起する頻度が高まる危険性があ る。一方、翻訳効率を向上させることができれば、適量のmRNAで大量のタンパク質を生産することができ、RNAiを回避しつつ目的の形質発現を実現でき るものと考えられる。そこで、タバコのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子の5’非翻訳領域配列由来の翻訳エンハンサー(94bp; NtADH-5'UTR)が、キク及びトレニアにおいて翻訳効率を向上させるかどうかを検証する。

成果の内容・特徴

  • NtADH-5'UTR翻訳エンハンサーを35SプロモーターとGUS遺伝子との間に挿入した場合、キク、トレニアともにGUS活性が高まる(図1)。NtADH-5'UTR翻訳エンハンサーを開始コドンに直結した場合、より高い効果が得られる。
  • NtADH-5'UTR翻訳エンハンサーを挿入することで翻訳効率(GUS活性/GUS mRNA比)が向上する(図2)。NtADH-5'UTR翻訳エンハンサーを開始コドンに直結した場合、より効果的である。

成果の活用面・留意点

  • NtADH-5'UTR翻訳エンハンサーを用いて外来遺伝子の翻訳効率を向上させることで、キク及びトレニアにおける遺伝子組換えによる形質改変の効率化がはかれる。
  • NtADH-5'UTR翻訳エンハンサーは、シロイヌナズナとタバコにおいて有効性が報告された一方で、イネ においては機能しないとされている。今回、キク及びトレニアでも機能することが明らかになったことから、少なくとも双子葉植物においては様々な植物種にお いて利用できる可能性が高い。
  • NtADH-5'UTR翻訳エンハンサーは、転写開始点及び開始コドンの両方に対して可能な限り近い位置に配置する必要がある。

具体的データ

図1 形質転換体のGUS活性分布図2 形質転換体の翻訳効率の比較

その他

  • 研究課題名:花きの花色改変等新形質付与技術の開発
  • 課題ID:211-k
  • 予算区分:交付金プロ(実用遺伝子)
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:間竜太郎、鳴海貴子(特別研究員)、大坪憲弘、山口博康、加藤晃(奈良先端大)、新名惇彦(奈良先端大)、柴田道夫
  • 発表論文等:Aida R. et al. (2008) Plant Biotechnol. 25(1): 69-75