花持ちの優れるカーネーション品種「ミラクルルージュ」、「ミラクルシンフォニー」におけるエチレン生合成遺伝子の発現解析

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要約

花持ちの優れる品種「ミラクルルージュ」、「ミラクルシンフォニー」は自然老化時のエチレン生成量が極めて少なく、ACC処理を行っても花持ち性短縮程度が小さい。花弁においてはエチレン生合成遺伝子のうちACSの発現が低下し、かつACOの発現が見られない。

  • キーワード:カーネーション、花持ち、エチレン生合成、ACC合成酵素、ACC酸化酵素
  • 担当:花き研・新形質花き開発研究チーム
  • 区分:花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

カーネーションは老化ホルモンであるエチレンに対する感受性が高く、エチレン生成を抑制し、花持ち日数を長くするためには出荷前 のチオ硫酸銀錯塩(STS)処理が必須であり、生産者への負担となっている。これに対し花き研究所で育成された「ミラクルルージュ」、「ミラクルシンフォ ニー」はエチレン生成量が極めて少なく、花持ちが通常品種より約3倍長い。そのため、生産者の薬剤処理の負担を軽減することができると期待されている。そ こで、「ミラクルルージュ」、「ミラクルシンフォニー」においてエチレン生成量が少ない原因を解明するため、エチレン生合成に関与する遺伝子の発現解析を 行なう。

成果の内容・特徴

  • 「ミラクルルージュ」の花持ち日数は22.4日、「ミラクルシンフォニー」の花持ち日数は26.3日と、対照品種「ホワイトシム」の3.0~3.6倍の花持ちを示す(表1)。両品種とも自然老化時のエチレン生成量が極めて少ない (図1E)。
  • エチレンの前駆体1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACC)の処理は、「ホワイトシム」の花持ちを大幅に短縮させる(表1)。しかし、同処理を「ミラクルルージュ」と「ミラクルシンフォニー」に行っても、両品種の花持ち性短縮の程度は小さい。これは両品種においてACC酸化酵素(ACO)の発現抑制が強いことを示している。
  • 「ミラクルルージュ」と「ミラクルシンフォニー」の花弁において、老化にともないACC合成酵素遺伝子DC-ACS1DC-ACS2DC-ACS3 の発現がわずかに見られたが、ACC酸化酵素遺伝子DC-ACO1 の発現は検出限界以下であった(図1A~D)。
  • 「ミラクルルージュ」と「ミラクルシンフォニー」においてエチレン生成量が極めて少ない機構に、ACC合成酵素の低下とACC酸化酵素の強い抑制の両者が関与していると結論される。

成果の活用面・留意点

  • カーネーションの花持ち性育種において有用な情報となる。

具体的データ

表1 「ミラクルルージュ」と「ミラクルシンフォニー」の花持ち日数

 

図1 自然老化時の花弁におけるエチレン生合成遺伝子の発現とエチレン生成

 

その他

  • 研究課題名:花きの花色改変等新形質付与技術の開発
  • 課題ID:221-k
  • 予算区分:交付金プロ(実用遺伝子)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:棚瀬幸司、小野崎隆、佐藤茂(京都府立大)、柴田道夫、市村一雄
  • 発表論文等:Tanase K. et al. (2008) Postharvest Biol. Tech. 47:210-217