EOD-FR処理はジベレリン応答性の変化を介してキクの茎伸長を促進する

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要約

明期終了時の短時間遠赤色光照射(EOD-FR)処理は、キクの短日処理開始後の茎伸長促進に有効である。ジベレリン(GA)応答性の変化がEOD-FR処理による伸長促進の一要因である。

  • キーワード:キク、EOD-FR、茎伸長、ジベレリン
  • 担当:花き研・生育開花調節研究チーム
  • 区分:花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

植物の生育過程において、光は光合成のエネルギー源としてばかりでなく生育調節のための情報としても重要である。そのうち、明期 終了時の短時間遠赤色光(730nm付近)照射(EOD-FR)が赤/遠赤色光受容体やフィトクロムを介して伸長反応や開花反応に影響することが知られて いる。そこで、キク切り花生産へのEOD-FR反応の活用の可能性を探るため、キクに対するEOD-FR処理の影響について、生育反応を解析するとともに ジベレリン(GA)との関連について検討する。

成果の内容・特徴

  • 短日条件(9時間日長)下でのEOD-FR処理により、キクの茎伸長が促進されるが、花芽分化には処理の影響はみられない(図1)。
  • EOD-FR処理による伸長促進効果は一過的に現れるのではなく、処理開始24時間後までの持続的な促進効果が確認される(図2)。
  • 茎伸長はジベレリン生合成阻害剤ウニコナゾール(UCZ) 処理により抑制され、EOD-FR処理しても伸長しない。この抑制はGA投与により回復することから、伸長ならびにEOD-FR処理に対する反応にはGAが関与している(図3)。
  • GA生合成遺伝子のうち解析したGA20酸化酵素遺伝子(2種類)、GA3酸化酵素遺伝子(2種類)、GA2酸化酵素遺伝子(1種類)について、EOD-FR処理による茎伸長促進に応じた発現量の変化は認められない(データ略)。
  • GAを投与した場合にEOD-FR処理により茎伸長が促進されることから、EOD-FR処理によりGA応答性は増大すると考えられる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本実験は、キク「神馬」を供試し、9時間日長、20/15℃(明期/暗期)条件に設定した人工気象器内で得られた結果である。
  • 圃場条件で利用可能なFR光源が導入された場合、伸長調節手法として活用可能である。

具体的データ

図1.キクの茎伸長および花芽分化に及ぼすEOD-FR処理の影響

 

図2.画像解析による伸長量の日変化の比較 図3.伸長反応におけるGA応答性に及ぼすEOD-FR処理の影響

 

その他

  • 研究課題名:きく等切り花の生育・開花特性の解明と安定多収技術の開発
  • 課題ID:213-g
  • 予算区分:重点強化、高度化事業(EOD)、基盤研究費
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:久松 完、住友克彦、清水 浩(茨城大)
  • 発表論文等:清水、久松 (2007) 植物環境工学、19(4): 203-207