花弁からの糖質の簡易・迅速抽出法の開発

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要約

花弁を熱エタノール溶液に浸漬した後、遠心分離することにより、花弁に含まれる糖質をホモジナイズせずに簡易・迅速に抽出できる2種類の方法を開発した。

  • キーワード:カーネーション、簡易・迅速抽出法、キンギョソウ、デルフィニウム、糖質、バラ、ブルースター
  • 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
  • 区分:花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

切り花において、糖質は蕾の開花促進や花弁の老化遅延に重要な役割を果たしている。そのため、糖質を抽出して定量することは、そ の機能を解析するうえで不可欠である。一般的に、糖質は熱エタノール中で酵素を失活させた後、ホモジナイズすることにより抽出される。しかし、これには多 大な労力が必要である。そこで、ホモジナイズを不要とする糖質の簡易・迅速な抽出方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 方法1では、花弁(新鮮重0.2g)を試験管中で100%エタノール2mLに浸漬し、75℃で20分間保持した後、内部標準 を加える。花弁組織を遠心式ろ過ユニット(孔径0.45μm)に移し、12,000×gで10分間遠心分離する。ろ過液を試験管に戻し,ろ過ユニット内の 組織残渣に100%エタノールを0.5mL加え再び遠心する。2回の遠心で得られたろ過液と試験管に残っていた液を合わせ、80℃で30分間加温し,乾燥 した試料を分析に供する(図1)。抽出操作に要する時間は1時間以内であり、通常1日以上かかるエタノール抽出法(従来法)よりも格段に短い。
  • バラ、カーネーション、デルフィニウムおよびブルースターの花弁を材料として、簡易・迅速抽出法(方法1)と従来法で抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った場合、糖質濃度に著しい差は認められない(表1)。
  • 方法2では、花弁(新鮮重0.5g)を80%エタノール10mLに浸漬し75℃で20分間保持した後、内部標準を加える。花弁組織をエタノール溶液とともに多岐管式吸引ろ過ユニットに流し入れ、吸引ろ過する(図2)。ろ過液を乾燥し、分析に供する。
  • バラ、カーネーション、キンギョソウおよびデルフィニウムの花弁を材料として、簡易・迅速抽出法(方法2)とエタノール抽出法で抽出し、HPLC分析を行った場合、糖質濃度に著しい差は認められない。
  • 方法1および2ともに、花弁から抽出した場合には組織残渣中の糖質含量は微量であることから、糖質は十分に抽出されていると判断される。

成果の活用面・留意点

  • 方法1は濃縮機が不要であることが大きな長所である。方法2は操作がきわめて容易なことが最大の長所であり、試料の検体数が多い場合に有効である。
  • 方法1および2ともに、バラ、カーネーション、デルフィニウムの葉と茎から抽出した場合も従来法との間に糖質濃度の著しい差は認められないことから、多くの器官に適用可能であると考えられる。
  • 内部標準にはソルビトールを、またHPLC分析には鉛結合型陽イオン交換カラムを用いた。

具体的データ

図1 簡易・迅速抽出法(方法1)の概略 図2 簡易・迅速抽出法(方法2)の概略

 

表1 エタノール抽出法(従来法)と簡易法(方法1)で抽出した花弁の糖質濃度

その他

  • 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
  • 課題ID:313-b
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2007年度
  • 研究担当者:市村一雄、乘越亮、加藤美紀(千葉暖地園研)、今西英雄(東京農大)
  • 発表論文等:Norikoshi R., Kato M., Ichimura K. (2008) Environ. Control Biol. 46:49-55.