ペチュニアの覆輪花弁におけるアントシアニン関連化合物の部位特異的制御

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ペチュニアの覆輪花弁では、アントシアニン色素の合成だけでなく、フラボノイドの配糖化も色彩部位によって異なる。覆輪模様の境界部分の細胞は色の濃さが段階的に変化し、その変化の様子は覆輪の種類で異なる。

  • キーワード:ペチュニア、覆輪、色素、アントシアニン、フラボノイド、配糖化
  • 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
  • 区分:花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

花弁の外縁部と内部の色彩が異なる覆輪は、花きに高い価値を付加する性質であると共に、遺伝子の発現制御を理解するための有効な 材料と考えられる。これまでペチュニアの覆輪花弁において、アントシアニン色素の量を制御する代謝段階を明らかにしている。覆輪花弁のアントシアニン関連 化合物の構造と分布を明らかにし、部位特異的制御を受ける新たな代謝段階を特定する。また覆輪花弁の色素合成の変化を細胞レベルで観察することで、覆輪の 種類による形成機構の違いを明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ペチュニアの覆輪品種(図1、2)の花弁に存在する5種類の主要フラボノイド(F1-5)と3種類の桂皮酸誘導体(C1-3)の構造を明らかにした(図3)。F2、F4、F5、C3は新規化合物である。ペチュニアにおいては、フラボノイドのマロン酸エステル体(F2、F4)とp-クマル酸およびカフェ酸の配糖エステル体(C1-3)の存在に関する、初めての報告である。
  • 外縁部着色-内部白色型品種の白色組織においては、ケルセチンの7位が配糖化されたF1、F2、F5の割合が着色組織よりも高い。特に7位とともに3’位が配糖化されたF5は、白色組織特異的に分布している(表1)。桂皮酸誘導体の分布には部位特異性は認められない。
  • 外縁部着色-内部白色型品種では、過去に報告したフラボノールの合成に加え、ケルセチンの7位および3’位の配糖化も部位特異的な制御を受けて、白色組織で活性が高まっていると考えられる。
  • 覆輪花弁における色彩の境界部位では、外縁部から内部に至る放射軸方向にかけて、色の濃さが細胞毎に段階的に変化している(図1、2)。外縁部白色-内部着色型品種(図1)の方が、外縁部着色-内部白色型品種(図2)よりも、同心円方向にかけて、細胞の色の濃さの均一性が高い。配色パターンの異なる品種間では、アントシアニン生合成の制御機構が異なっていると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 覆輪花弁における部位特異的な遺伝子の発現機構を理解する手がかりとなる。
  • 新たな模様を持つ品種を作出するための基礎的な知見となる。

具体的データ

図1 外縁部白色-内部着色型ペチュニア覆輪品種

図2 外縁部着色-内部白色型ペチュニア覆輪品品種

図3 ペチュニア花弁に含まれるフラボノイドと桂皮酸誘導体の構造

表1 外縁部着色-内部白色型ペチュニア覆輪品種の開花花弁におけるフラボノイドと桂皮酸誘導体の組成(mmol/g 新鮮重量)

 

その他

  • 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
  • 課題ID:313-b
  • 予算区分:交付金プロ(組換え植物、形態生理)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:中山真義、斎藤涼子(東京理科大理工)、朽津和幸(東京理科大理工)、小関良宏(農工大工)
  • 発表論文等:Saito, R. et al. (2007) J. Plant Res. 120: 563-568