キクわい化ウイロイドの感染性cDNAクローンの作製

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要約

キクわい化ウイロイドの感染性cDNAクローンを合成した。これを鋳型にして合成したCSVd RNAは、天然のCSVdと同様に宿主植物への感染力をもち、接種試験に利用できる。

  • キーワード:キクわい化ウイロイド、感染性cDNAクローン、RNA
  • 担当:花き研・生育開花調節研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6801
  • 区分:花き
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

キクわい化病の病原体であるキクわい化ウイロイド(Chrysanthemum stunt viroid; CSVd)はキクの難防除病原体の1つである。これまでにCSVdの感染性cDNAクローンが作製されていないことから、人為的に変異体を作製できず、塩基配列の解析を行うことができなかったために、分子生物学的な研究はほとんどなされていない。そこで、CSVdの感染性cDNAクローンの作製を試み、その評価を接種試験で行なう。

成果の内容・特徴

  • T7 RNAポリメラーゼでRNAを合成できるように(表1)のプライマーを設計した。このプライマーを用いてT7プロモーターの配列を5’側に付加したCSVdの全長cDNAを作製した。
  • それを鋳型にして合成した直鎖状のCSVd RNAをイソギクに機械的接種すると、感染植物から抽出・精製した天然のCSVdと同様に、CSVdの感染が確認できる(表2)。
  • 一方、鋳型として用いたcDNAやその配列をもつプラスミドには感染性は認められない。
  • 合成CSVd RNAを宿主植物に接種すると、イソギク、トマト、アゲラタムからは4週間後に、シュンギクからは8週間後にCSVdが検出される(表3)。
  • 合成CSVd RNAの接種によってCSVdが感染したイソギクまたはトマトから、CSVd RNAを抽出し、そのRNAを健全なトマトに接種するとCSVdの感染が確認できる。
  • 以上のことから、本方法によって合成されたCSVd RNAはCSVd宿主植物に感染し、複製能を持ち、接種試験に利用できることを初めて示した。

成果の活用面・留意点

  • CSVdの感染性cDNAクローンの確立によって、任意のCSVdの変異体の作製が可能となり、CSVdの植物体内における移行や複製の解明に利用できる。
  • CSVdの感染性cDNAクローンを用いることで、安定的にCSVdの接種試験を実施できる。

具体的データ

表1 CSVd RNAの鋳型cDNA作製に使用するプライマー

表2 イソギクにおける合成CSVd RNAの感染能

表3 合成CSVd RNAの宿主植物における感染能

その他

  • 研究課題名:きく等切り花の生育・開花特性の解明と安定多収技術の開発
  • 課題ID:213-g
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:松下陽介、P.K.R.Kumar(産総研)
  • 発表論文等:Matsushita Y. et al. (2009) Phytopathology 99(1):58-66.