アブシシン酸を用いたトルコギキョウ切り花の品質保持技術
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
トルコギキョウ切り花において、10μMのアブシシン酸(ABA)を4%スクロースと組みあわせることにより、スクロースによる障害葉の発生が抑制でき、かつ切り花および葉の日持ちが延長する
- キーワード:アブシシン酸、障害葉、スクロース、トルコギキョウ、葉の日持ち
- 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-6801
- 区分:花き
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
近年、消費者の人気が高まっているトルコギキョウでは、スクロースを出荷前に短期間処理(前処理)すると、切り花の花持ち延長、つぼみの開花促進、花色発現等に効果がある。しかし、前処理時に高濃度のスクロースを処理した場合、葉に障害が発生することがある。これまでに相対湿度を高め、処理液の吸収量を抑えることにより障害葉の発生を回避する技術を開発した(H18年度成果情報)。しかし、処理時に湿度環境を制御することが困難な場合も多い。そこで、気孔を閉鎖する作用をもつ植物ホルモンであるアブシシン酸(ABA)を用いて、処理液の吸収量を抑えることにより障害葉の発生を抑制する前処理方法の開発を行なう。
成果の内容・特徴
- 品種「ミラコーラル」切り花に、蒸留水、10μM (+) アブシシン酸、4%スクロース溶液、両者を組みあわせた溶液をそれぞれ吸収させると、処理液の吸収量はABA添加区で減少する(表1)。
- 4%スクロース単用処理では、50%の切り花において障害葉の発生がみられる。一方、4%スクロース+ABA処理では障害葉の発生がみられない(表1)。
- 切り花の花持ちは、4%スクロース処理および4%スクロース+ABA処理で蒸留水に比べて延長する。さらに、ABA処理および4%スクロース+ABA処理で葉の日持ちが延長する(表1、図1)。
- 以上により、4%スクロースとABAを組みあわせた前処理により、障害葉の発生が抑制され、花および葉の日持ちが延長する。
成果の活用面・留意点
- 本実験の結果は、23℃、相対湿度66%、暗黒条件下で各処理液を切り花の切り口から21時間吸収させ、処理後切り花を蒸留水に挿し、23℃、相対湿度70%、光強度10μmol・m-2・s-1 、12時間日長条件で保持して得られたものである。
- 本実験ではアブシシン酸は(+)ABAを用いた。同濃度の(±)ABAでは障害葉の発生抑制および葉の日持ち延長効果はやや劣る。
- 4%スクロースおよび4%スクロース+ABA溶液には、抗菌剤として0.5mL・L-1のレジェンドMKを加えている。
具体的データ


その他
- 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
- 課題ID:313-b
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2005~2008年
- 研究担当者:湯本弘子、市村一雄
- 発表論文等:Shimizu-Yumoto H. and Ichimura K. (2009) J. Hort. Sci. Biotech. 84(1):107-111.