花持ちの優れるデルフィニウム系統「B-10」におけるエチレン生成およびエチレン感受性の解明

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要約

花持ちの優れるデルフィニウム系統「B-10」は自然老化時のエチレン生成能は有しているが、エチレン感受性は対照品種に比べ低下している。また、エチレン阻害剤処理により、さらに花持ちが延長する。

  • キーワード:デルフィニウム、花持ち、エチレン生合成、エチレン感受性
  • 担当:花き研・新形質花き開発研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6801
  • 区分:花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

デルフィニウムは花穂が特徴的な花きであるが、エチレン感受性が高く、出荷前のチオ硫酸銀錯塩(STS)処理が必須である。STSは重金属を含むため、環境汚染が懸念されている。また、STS処理は生産者への労働負担となっているだけでなく、不適切な処理により流通途上でしばしば花弁やがくの落花が問題となっている。デルフィニウム系統「B-10」はグランディフローラム系とエラータム系の種間雑種で3倍体の系統である(図1)。「B-10」の花は通常の品種に比べて花持ちに優れることが知られており、生産者の品質保持剤処理の負担等を軽減することができると期待されている。そこで「B-10」の花のエチレン生成特性およびエチレン感受性を調査し、花持ち性に優れる要因を解明した。

成果の内容・特徴

  • 「B-10」の花持ち日数は9.0日と、対照品種の「ベラモサム」の4.9日より著しく長い(表1)。
  • 自然老化時において「B-10」のエチレン生成は「ベラモサム」で見られるような収穫3日後に起こる明らかなエチレン生成量の増加(クライマクテリック様のエチレン生成)が見られず、経時的なパターンが異なる(図2)。
  • 「B-10」の小花は「ベラモサム」と異なり、エチレン処理後もがくの脱離は見られず、花持ちも無処理の場合とほぼ同じである(表1)。
  • エチレン作用阻害剤のSTSあるいはエチレン生合成阻害剤のアミノエトキシビニルグリシン(AVG)の連続処理は「B-10」と「ベラモサム」の小花の花持ちを延長する(表1)。
  • これらの結果から、「B-10」の優れる花持ち性はエチレン感受性の低下が関与していると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 生産者の労働負担軽減および環境負荷の低減に向けたデルフィニウムの花持ち性育種において有用な情報となる。
  • 「B-10」を親系統として後代の開発も行われている。
  • 「B-10」と同様にグランディフローラム系とエラータム系の雑種であるベラドンナ系の「ベラモサム」を対照品種とした。

具体的データ

図1 「B-10」の小花

図2 自然老化時の「B-10」と「ベラモサム」小花からのエチレン生成

表1 「B-10」と「ベラモサム」の花持ちとエチレン、STSおよびAVG処理の影響

その他

  • 研究課題名:花きの花色改変等新形質付与技術の開発
  • 課題ID:221-k
  • 予算区分:交付金プロ(実用遺伝子)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:棚瀬幸司、徳弘晃二(カネコ種苗(株))、天野正之(カネコ種苗(株))、市村一雄
  • 発表論文等:1)Tanase et al. (2009) Postharvest Biol. Technol. 52:310-312
                       2)徳弘ら (2006) 園芸学研究 5:357-361.