ポットカーネーションの倍数性と育種的背景

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要約

ポットカーネーションには三倍体や四倍体の倍数体品種が多数存在する。それら倍数体品種は特徴的なSSRの対立遺伝子を有し、二倍体品種とは異なる育種素材が利用されたものと推察される。

  • キーワード:カーネーション、倍数性、SSR、遺伝子型、フローサイトメトリー
  • 担当:花き研・新形質花き開発研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6801
  • 区分:花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

わい性タイプのカーネーションであるポットカーネーションは、近年、母の日向けの鉢物として人気が高まっており、品種育成も盛んに行われている。ポットカーネーションについては育成過程や育種素材等の詳細については不明な点が多く、倍数性についても明らかになっていない。そこで、フローサイトメトリーならびにSSRマーカー(ゲノム中に存在する反復配列の繰り返し数の違いを検出)を利用して、ポットカーネーションの倍数性ならびに育種的背景を推定する。

成果の内容・特徴

  • フローサイトメトリー解析から、供試した45品種中27品種は二倍体の切り花カーネーションとほぼ同じ核DNA量を有しており、二倍体と推定される。残り18品種中3品種は約1.5倍、15品種は約2倍の核DNA量を有することから、それぞれ三倍体、四倍体と推定される。切り花カーネーションのほとんどが二倍体であるのに対し、ポットカーネーションには多数の倍数体品種が存在する(図1)。
  • 押しつぶし法によりカウントした根端細胞の実際の染色体数は、フローサイトメトリーによる推定倍数性と一致する(図2)。
  • SSRマーカー解析から、二倍体ポットカーネーションは二倍体切り花カーネーションと共通する対立遺伝子が多く存在する(表1)。また、各SSR座の遺伝子型の違いから推定した遺伝距離に基づいて作成した系統樹上では、どちらも遺伝的に混在することから、切り花カーネーションと共通の育種素材の利用が示唆される(図3)。
  • SSRマーカー解析から、倍数体品種には二倍体切り花カーネーションや二倍体ポットカーネーションには存在しない特異的対立遺伝子が存在する(表1)。
  • これらの結果から、ポットカーネーションの育種過程においては、花色、花型、草型などの形態的特徴と併せて、野生種等の育種素材が導入された可能性が示唆される。

成果の活用面・留意点

  • ポットカーネーションの品種開発のための基礎的知見となり、倍数性育種等を行う際の交配母本選定に有用である。

具体的データ

図1 フローサイトメトリーによる核DNA量の比較(左図)とポットカーネーション45品種の推定倍数性

図2 押しつぶし法による根端細胞の染色体像 (A) ‘カミーユ’(2n=2x=30)、(B) ‘ベイビーハート’(2n=3x=45)、(C) ‘トゥーラ’(2n=4x=60)スケール = 10 μm.

表1 ポットカーネーションと切り花カーネーションにおけるSSR解析による対立遺伝子の種類の違い

図3 SSRマーカーを用いた二倍体のポットカーネーション(黒字)と切り花カーネーション(赤字)の遺伝的関係

その他

  • 研究課題名:花きの花色改変等新形質付与技術の開発
  • 課題ID:221-k
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2005-2008年度
  • 研究担当者:八木雅史、小野崎 隆、山本俊哉(果樹研)、木村鉄也(種苗セ)
  • 発表論文等:Yagi et al. (2009) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 78:335-343