ポットカーネーションの花持ち性、エチレン生成量、エチレン感受性の品種間差異

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要約

ポットカーネーションの花持ち性、エチレン生成量、エチレン感受性には大きな品種間差異がある。「ポラリス」、「バンビーノ」など花持ち性の優れる品種が複数存在し、それらでは、老化時のエチレン生成量、自己触媒的エチレン生成量が低下している。

  • キーワード:花持ち、老化、自己触媒的エチレン生成、倍数性
  • 担当:花き研・新形質花き開発研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6814
  • 区分:花き
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

ポットカーネーションは矮性タイプのカーネーションで、「母の日」向けの鉢物として人気が高まっており、品種育成も盛んに行われている。その花持ち性は、流通段階や購入後における環境条件によりしばしば低下し問題となっている。そこで、流通・消費段階での花持ち性低下軽減や、育種研究への活用、老化機構解明への基礎資料とするため、倍数体品種を含む42品種を供試し、花持ち性、エチレン生成量及びエチレン感受性の品種間差異を調査する。

成果の内容・特徴

  • 供試した42品種の花持ち日数には、13.8日から3.2日まで著しい品種間差異が認められる(図1図3)。
  • 二倍体品種の「ポラリス」、四倍体品種の「バンビーノ」の花持ち日数は、それぞれ13.8日、12.1日で、他の品種に比べて花持ち性に優れる(図1)。
  • 花持ち性の優れる品種では、老化時のエチレン生成量が極めて少なく(図2A)、通常の品種で生じる花弁のインローリング、萎凋を示さずに、花弁の縁から褐変することで観賞価値を失う。
  • エチレン(10μL・L-1)で花を連続処理した際の花弁の萎凋が生じるまでの反応時間は、「オレンジデュオ」の16.1時間から「ロディン」の4.1時間まで著しい品種間差異が認められる。花持ち性の優れる「ポラリス」、「バンビーノ」の反応時間はそれぞれ6.9時間、6.0時間で、エチレン感受性が特に低い傾向は見られない(図2C)
  • 供試品種の花持ち日数と、老化時のエチレン生成量、自己触媒的エチレン生成量との関係を調べたところ、いずれも有意な負の相関(r=-0.62**、-0.48**)が認められる(図2A、B)。一方、花持ち日数とエチレン感受性との間には、有意な相関関係は認められない(図2C)
  • 倍数性と花持ち性との間に関連性は認められない(図1)。供試した三倍体や四倍体の品種中にはエチレン低感受性品種は存在せず、二倍体品種に比べ、エチレン連続処理に対する反応時間が6時間未満のエチレン高感受性品種が多い傾向がある(図2C)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究では、多数の材料を均一な条件で評価するため、材料を農研機構花き研のガラス温室内で同一の条件で栽培管理した上で、開花した花を1~5cmに切って、花持ち性、エチレン感受性を調査した。花を切らない条件、つまり鉢物としての花持ち性、エチレン感受性については、今後数品種に絞った上で検討する必要がある。
  • 老化時のエチレン生成量(図2A)は花が観賞価値を失った日の生成量、自己触媒的エチレン生成量(図2B)は採花当日にエチレン処理(2μL・L-1で16時間)後の生成量である。

具体的データ

図1 ポットカーネーション42品種の花持ち性の品種間差異

図2 花持ち日数と、老化時のエチレン生成量(A)、自己触媒的エチレン生成量(B)、エチレン感受性(C)との関係

図3 ポットカーネーション6品種の花持ち性の差異

その他

  • 研究課題名:花きの花色改変等新形質付与技術の開発
  • 課題ID:221k
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:小野崎 隆、八木雅史、棚瀬幸司
  • 発表論文等:小野崎ら(2009)園芸学研究、8(4):399-405