遺伝子組換えによる"黄花神馬"の作出

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要約

遺伝子組換えでカロテノイド酸化開裂酵素遺伝子(CmCCD4a)の発現を抑制することにより、キク「神馬」の白色花弁を黄色に改変出来る。

  • キーワード:キク、カロテノイド、カロテノイド酸化開裂酵素(CmCCD4a)、花色、遺伝子組換え、RNA干渉
  • 担当:花き研・新形質花き開発研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6813
  • 区分:花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

「神馬」は栽培ギクの中で最も生産量が多い白花輪ギク品種である。枝変わりの選抜や放射線照射等による変異育種により"黄花神馬"の作出が試みられているが、「神馬」は黄色への変異が起こりにくい品種であり、未だ成功していない。キク花弁の白色は合成されたカロテノイドが白色花弁特異的に発現しているカロテノイド酸化開裂酵素(CmCCD4a)により分解されることにより形成される。そこで、遺伝子組換えにより「神馬」花弁におけるCmCCD4aの発現を抑制し、花弁にカロテノイドが蓄積した"黄花神馬"の作出を試みる。

成果の内容・特徴

  • カナマイシン耐性マーカーを持つバイナリーベクター pBI101を用いてCmCCD4aのRNA干渉(RNAi)コンストラクトを作製し、アグロバクテリウム法により「神馬」に導入する。CmCCD4a の発現が野生型の16.4%まで抑えられ、花の中心部がわずかに黄色に着色した形質転換体 (T1) が得られる。
  • ハイグロマイシン耐性マーカーを持つバイナリーベクター pH7GWIWG2(II) を用いてRNAiコンストラクトを構築してT1に導入することにより、CmCCD4a の発現が野生型の10%以下に抑えられ、舌状花弁が黄色になった形質転換体を得ることができる(T2)(図1)。
  • T2の中で最も花弁の黄色が濃かった系統(T2-2)は102μg/gfwのカロテノイドを花弁に蓄積している(図1)。このときのCmCCD4aの発現量は野生型の0.4%である(図2)。
  • 形質転換「神馬」の茎長や葉の大きさが野生型よりも小さい値を示す傾向が認めらるが、花径には有意な差が認められない(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 遺伝子組換えによるキクの花色改変に活用できる。
  • キク以外の植物に応用する場合は、花弁におけるカロテノイドの蓄積にカロテノイド酸化開裂酵素が関与しているかどうかを調べる必要がある。
  • 栄養体が形質転換体において小さい傾向を示した原因として、培養変異またはカロテノイド分解産物の影響が考えられ、今後さらに検討していく必要がある。

具体的データ

図1 CmCCD4aの発現を抑制した形質転換体の花弁(最外側の舌状花弁)におけるカロテノイド量とCmCCD4a発現量

図2 形質転換体の生育特性比較

その他

  • 研究課題名:花きの花色改変等新形質付与技術の開発
  • 課題ID:221k
  • 予算区分:交付金プロ(実用遺伝子)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:大宮あけみ、住友克彦、間竜太郎
  • 発表論文等:Ohmiya A. et al. (2009) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 78(4): 450-455