トルコギキョウの低コスト冬季計画生産技術の開発と基本マニュアル
要約
大苗定植、長日処理、初期重点追肥と高昼温・低夜温管理を組み合わせることで、トルコギキョウを冬季の目標時期に作付け個体の80%以上を低コストで出荷できる。本技術を解説した基本マニュアルは個別産地ごとの技術構築に活用できる。
- キーワード:トルコギキョウ、冬季出荷、ブラスチング、高昼温低夜温管理、長日処理
- 担当:花き研・生育開花調節研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-6801
- 区分:花き
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
トルコギキョウは周年需要がある主要花きであるが、流通量が夏季の4分の1と少なく高単価となる冬季に熱帯地域からの輸入が増加している。冬季出荷は暖房経費がかかる上、花芽分化の遅れや分化した蕾が壊死するブラスチングが生じて計画生産が困難な作型である。そこで切り花長70cm2花2蕾以上の品質の切り花を、低コストで冬季(1~3月)に計画生産できる技術を開発し、基本マニュアルを作成して生産現場への迅速な普及を促進する。
成果の内容・特徴
- 加温が必要な冬季出荷作型の生産コストは栽培期間と加温設定温度および出荷率が大きく影響する。慣行の本葉2対苗よりも大きい本葉3対の大苗を定植することにより目標品質を達成しつつ在圃期間を49日短縮できる。定植初期の水管理および生育初期の追肥が生育量の確保に有効である(表1)。
- 昼温を慣行の25℃よりも高い30℃目標に管理することで、夜間の加温設定温度を慣行の15℃よりも低い10℃にしても生育を遅らせることなく暖房コストを慣行の45%に削減でき、ブラスチングが減少する(表1)。
- 定植時から発蕾後8週まで白熱灯を用いた長日処理を行うと低夜温条件でも花芽分化が促進されるとともに、ブラスチングが減少する(表1)。
- 個別技術を組み合わせることで、冬季(11~1月)日照時間が350時間程度の低日照地域においても、1月に10aあたりの生産コスト274万円(図1)で出荷本数28,890本(出荷率80%以上)となることから1本あたり100円以下のコストで生産できる。
- 低コスト冬季計画生産のための考え方、個別技術のポイントと留意点、実証栽培をもとにした低日照地域での1月出荷マニュアル(図2)、および日照条件と出荷月別の作型表と作業内容から成る基本マニュアルを作成した。本マニュアルをもとに生産現場で目標出荷時期別の栽培体系を構築することができる。
成果の活用面・留意点
具体的データ



その他
- 研究課題名:きく等切り花の生育・開花特性の解明と安定多収技術の開発
- 中課題整理番号:213g
- 予算区分:実用技術
- 研究期間:2008~2010年
- 研究担当者:福田直子、牛尾亜由子、川勝恭子、福島啓吾(広島農技セ)、山口茂(熊本農研セ)、工藤陽史(熊本農研セ)、駒形智幸(茨城園研)、内田智子(茨城園研)、原 坦利(福岡県花卉農協)
- 発表論文等:牛尾・福田(2010)園芸学研究、9(2):191-196