萎凋細菌病抵抗性カーネーション実用品種「花恋(かれん)ルージュ」
要約
「花恋ルージュ」は、DNAマーカー選抜により開発された赤色のスタンダードタイプの萎凋細菌病抵抗性カーネーション実用品種であり、野生種Dianthus capitatus由来の強抵抗性を有する。
- キーワード:カーネーション、萎凋細菌病、DNAマーカー、ダイアンサス属
- 担当:花き研・新形質花き開発研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-6814
- 区分:花き
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
萎凋細菌病は、日本の暖地におけるカーネーション栽培上最も重要な病害であり、効果的な防除法がないため抵抗性品種の開発が強く望まれている。これまでに、カーネーションの属するダイアンサス属野生種の中に、強抵抗性を有するD. capitatusを見出し、カーネーションとの種間交雑により強抵抗性を有する中間母本「農1号」を育成している。しかし、「農1号」は野生種の形質を強く残しており、改良の余地がある。そこで、D. capitatus由来の抵抗性を有する実用的なカーネーション品種を開発する。
成果の内容・特徴
- 「花恋ルージュ」(図1)は、「農1号」に品種・系統への交雑と浸根接種法を用いた抵抗性による選抜を繰り返し行い、2006年の6回目の交配で花持ち性の優れる品種「ミラクルルージュ」と抵抗性系統4AZ31-5を交雑した実生から選抜して育成した品種である。2004年の5回目の交配からD. capitatusの萎凋細菌病主働抵抗性に連鎖したDNAマーカーSTS-WG44を用いたマーカー選抜を行っている(図2)。2008年~2010年に系統適応性検定試験を実施した結果、強い萎凋細菌病抵抗性と切り花としての実用性が認められ、2010年2月17日に品種登録出願を行い、同年4月22日に出願公表されている。
- 安定した強い萎凋細菌病抵抗性が最大の特徴である。6回の抵抗性検定における平均発病率は7.1%であり、罹病性品種「フランセスコ」(87.0%)、「ノラ」(97.1%)に比べて非常に強い抵抗性を有する(図3、表1)。
- 花色は赤の主要品種「フランセスコ」とほぼ同じ濃橙赤色(JHSカラーチャート0707)の単色花で、スタンダードタイプの品種である(図1、表1)。
- 花径は7.5cmの大輪であり、がく割れの発生はない(表1)。
- がっしりとした草姿であり、茎径ならびに下垂度とも対照品種並みである(表1)。
- 切り花の花持ち日数は対照品種より長い13.1日であるが、薬剤処理した時の花持ち日数は対照品種並みである(表1)。
- 収穫開始日は、「フランセスコ」に比べて遅く、中晩生である。株当たりの切り花収穫本数は、「フランセスコ」より少なく、「ノラ」より多い(表1)。
成果の活用面・留意点
- 全国のカーネーション生産地で栽培可能である。特に、萎凋細菌病の発生が予想される暖地での栽培が期待される。
具体的データ




その他
- 研究課題名:花きの花色改変等新形質付与技術の開発
- 中課題整理番号:221k
- 予算区分:基盤
- 研究期間:1988~2010年度
- 研究担当者:八木雅史、小野崎隆、山口隆、天野正之、池田広、谷川奈津、柴田道夫、住友克彦、棚瀬幸司
- 発表論文等:
八木ら「花恋ルージュ」品種登録出願 2010年2月17日(第24609号)(農林認定品種「カーネーション農林3号」)
八木ら (2010) 花き研報、10:1-10