低温期でも覆輪安定性の高いトルコギキョウを作出する方法

要約

トルコギキョウの覆輪は環境によって表現型が大きく変動するため、覆輪着色面積率が最も高くなる20℃一定で底面給水により5月に開花させる条件で、面積率の低い個体を選抜して交配親とすることで、覆輪安定性の高いF1が得られる。

  • キーワード:トルコギキョウ、覆輪面積率、親系統、選抜、F1
  • 担当:花き研・生育開花調節研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6801
  • 区分:花き
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

純白色の花弁の先端側がアントシアニン色素で縁取られる覆輪はトルコギキョウの代表的な花色だが、低温期を経る冬春出荷で覆輪面積率が増加して覆輪「色流れ」が多く生じて外観品質を損なう。冬季の覆輪面積率の増加防止には、高昼温管理や施肥窒素量の削減等の耕種的な対策が有効であるが、このような耕種的な対策を不要にするために、既存のF1品種の親系統を用いて遺伝的に覆輪安定性の高いトルコギキョウを作出する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • トルコギキョウの市販品種のほとんどは、異なる固定系統を種子親および花粉親として得られるF1品種である。覆輪のF1品種は多くの場合、覆輪系統を両親として用いており、F1品種の覆輪安定性は親系統の覆輪安定性が影響する(図1)。
  • 覆輪面積率は栽培環境によって大きく変化し、育種圃場を模した温室栽培・間欠潅水・7月開花条件では覆輪面積率が低く個体間差も認めにくいため(図2)、覆輪安定性の高い個体は選抜できない。
  • 覆輪面積率の平均値が最も高くなる20℃・底面給水・5月開花条件において(図2)、覆輪面積率が3%と低い個体は、自殖後代も同環境で4%と低く、遺伝的に覆輪安定性が高いことを示す。遺伝的に覆輪安定性の高い個体・系統は覆輪面積率の平均値が高くなる栽培条件下で覆輪面積率が低い個体を選抜することで得られる。
  • 20℃・底面給水・5月開花条件で覆輪面積率が3%の覆輪安定性が高い個体を種子親として用いると、最も覆輪面積率が高くなる同条件でもF1の平均覆輪面積率は8%と低く、高い覆輪安定性を示す。すなわち、覆輪安定性が高い個体を交配親とすることで遺伝的に覆輪安定性の高いF1が得られる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 低温期を経る冬春出荷の作型でも覆輪面積率が増加しにくいF1品種を育成する手法として活用できる。
  • 20℃底面給水区は自然光型人工気象室で実施しており、8月開花と5月開花の違いは花芽分化発達時の日射量の差と考えられる。
  • トルコギキョウは自殖弱勢が生じることから、選抜系統の維持には配慮が必要である。

具体的データ

図1.トルコギキョウF1 品種と親系統の覆輪安定性の概念図

 

図2.栽培環境による覆輪面積率の変化

 

F<sub>1</sub> の覆輪安定性におよ ぼす親系統の影響

その他

  • 研究課題名:きく等切り花の生育・開花特性の解明と安定多収技術の開発
  • 中課題整理番号:213g
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010年
  • 研究担当者:福田直子、牛尾亜由子、羽田野昌二((株)ミヨシ)、秋本徹((株)ミヨシ)、大沢良(筑波大院)
  • 発表論文等:福田ら(2010)園芸学研究、9(3):255-261