花きにおける6つの新たな菌類病
要約
花きの新たな菌類病であるアサガオ黒斑病、インパチェンス類立枯病、スカビオサべと病、ルドベキア黒斑病、ベゴニア根腐病および茎腐病を命名・記録したことにより、各病害を情報に基づいて的確に診断できる。
- キーワード:新病害、診断、花き、菌類病
- 担当:花き研・生育開花調節研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-6820
- 区分:花き
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
近年、農作物、特に花き類においては多品目化や栽培法の変化に伴い、生育不良や収量低下の事例が多く報告されている。中でも病原微生物による生育阻害頻度が高い傾向にあることから、花きに新たに発生する病害の原因を解明し、その診断法構築の基礎知見を得る。
成果の内容・特徴
- アサガオ(ヒルガオ科)、インパチェンス類(ツリフネソウ科)、スカビオサ(マツムシソウ科)、ルドベキア(キク科)およびベゴニア(シュウカイドウ科)の生育を阻害する新たな菌類病の病徴と病原菌を明らかにし、それぞれを黒斑病、立枯病、べと病、黒斑病、根腐病および茎腐病と命名・記録することにより、各病害が的確に診断できる。
- アサガオ黒斑病:葉に、黒~茶色で同心円状の輪紋が確認され、ひどくなると輪紋は融合して拡大する(図1-A)。病原は不完全菌類のAlternaria alternata。
- インパチェンス類立枯病:坪状に発生し、地際から軟化・腐敗~枯死する(図1-B)。病原は不完全菌類のRhizoctonia solani AG-2-2 IIIB。
- スカビオサべと病:葉の全体あるいは一部が退色~黄化し始め、葉表面では次第に輪郭が不明瞭で、黒~茶色のまばらな斑点を示し、その裏面には霜状のかびを密生する(図1-C)。病原は卵菌類のPeronospora knautiae。
- ルドベキア黒斑病:葉に、葉縁や中心部が黒~茶色の斑点が確認され、ひどくなると融合して拡大する(図1-D)。病原は不完全菌類のAlternaria alternata。
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ベゴニア根腐病および茎腐病:地際部が水浸状になり、根が腐敗する(図1-E)。2菌種が複合的に寄生。根腐病の病原は卵菌類のPythium ultimum var. ultimum、茎腐病の病原は不完全菌類の2核のRhizoctonia AG-F。
成果の活用面・留意点
- 病原菌を明らかにすることにより、同種の菌による他の宿主での病害の防除法を効果的に適用できる可能性がある。
- 人工培養のできないスカビオサべと病菌を除く、分離した病原菌株は今後の診断時の標準菌株としてのみならず、各菌種の寄生性分化等の基礎研究に活用できる。
- これらの病害は、花き病害図鑑公開後に花き研究所が中心となり公表したものであり、また、花き病害図鑑https://kakibyo.dc.affrc.go.jp/list/menu.phpに追加・公表している。
具体的データ

その他
- 研究課題名:きく等切り花の生育・開花特性の解明と安定多収技術の開発
- 中課題整理番号:213g
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2009~2010年
- 研究担当者:佐藤衛、築尾嘉章、松下陽介、植松清次(千葉農総研)、
蓮見瑠子(千葉農林振興セ)、西 和文(元野菜茶研)、窪田昌春(野菜茶研)
- 発表論文等:佐藤ら(2009)
関東病虫研報、56:63-64
佐藤ら(2009)
関東病虫研報、56:65-66
佐藤ら(2010) 関東病虫研報、57:47-48