カーネーションの加齢による自己触媒的エチレン生成能低下のメカニズム
要約
花持ちに優れるカーネーションでは、加齢に伴い自己触媒的エチレン生成能が低下する。これはACC合成酵素遺伝子Dc-ACS1のエチレンによる発現誘導が加齢に伴い低下するために起こる。
- キーワード:自己触媒的エチレン生成、ACC合成酵素遺伝子
- 担当:花き研・新形質花き開発研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-6814
- 区分:花き
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
カーネーションでは、加齢に伴い外生的にエチレンを処理してもインローリング(花弁が内側へ巻き込み萎凋する現象)が見られなくなり、自己触媒的エチレン生成能も低下する。自己触媒的エチレン生成能の低下の原因を調べるため、花持ちに優れるカーネーションを利用し、エチレン生合成関連遺伝子の発現を解析する。
成果の内容・特徴
- 対照品種「ホワイトシム」(花持ち日数約6日)、花持ちに優れる品種「ミラクルルージュ」と「ミラクルシンフォニー」(花持ち日数約18日)を実験に用いた。収穫0日および収穫3日後では、すべての品種において外生的エチレン(10μL・L-1)の処理時間を延長するに従い自己触媒的エチレン生成量の増加が見られる(図1)。しかし、「ミラクルルージュ」と「ミラクルシンフォニー」では、収穫15日後に20時間エチレン処理を行っても自己触媒的エチレン生成量はほとんど増加しない。
- 自己触媒的エチレン生成を制御するエチレン生合成関連遺伝子Dc-ACS1とDc-ACO1の発現を調査した(図2)。収穫3日後では、すべての品種において外生的エチレン(10μL・L-1)の処理時間を延長するに従いDc-ACS1の発現が上昇する(図3)。しかし、「ミラクルルージュ」と「ミラクルシンフォニー」では、収穫15日後に20時間エチレン処理を行ってもDc-ACS1の発現上昇はわずかである。
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外生エチレンによるACC酸化酵素遺伝子Dc-ACO1の発現量は加齢による影響を受けない(図4)。
成果の活用面・留意点
- 花持ちに優れるカーネーションの分子機構解明につながる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:花きの花色改変等新形質付与技術の開発
- 中課題整理番号:221k
- 予算区分:交付金プロ(実用遺伝子)
- 研究期間:2005~2010年度
- 研究担当者:棚瀬幸司、小野崎隆、佐藤茂(京都府大)、柴田道夫、市村一雄
- 発表論文等:Tanase K. et al. (2011) JARQ 45:107-116