エチレン合成阻害剤とオーキシンを用いたトルコギキョウ切り花品質保持期間延長

要約

エチレン生合成阻害剤アミノエトキシビニルグリシン(AVG) 1mMとオーキシンナフタレン酢酸(NAA)5μMを組み合わせた処理は、トルコギキョウ切り花の品質保持期間を著しく延長する。

  • キーワード:AVG、NAA、トルコギキョウ、品質保持期間
  • 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6821
  • 区分:花き
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

トルコギキョウ切り花の花の老化にはエチレンが関与している。エチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩(STS)はカーネーションやスイートピー切り花の品質保持期間延長に効果が高いが、トルコギキョウ切り花では1.5倍程度の品質保持期間延長にすぎない。これまでに、STSを糖と組み合わせることにより、トルコギキョウ切り花の品質保持期間を約2倍に延長することを示した(H15年成果情報)が、トルコギキョウにおいては、STSよりも品質保持効果の高いエチレン阻害剤がある可能性が考えられた。そこで、エチレン生合成阻害剤AVGがトルコギキョウ切り花の品質保持期間に及ぼす影響を明らかにする。また、AVGはオーキシン生合成も阻害する可能性があるためNAAを併用する。

成果の内容・特徴

  • 品種「海ほのか」切り花に、蒸留水、5μM ナフタレン酢酸(NAA)、1mMアミノエトキシビニルグリシン(AVG)、両者を組みあわせた溶液をそれぞれ吸収させ、その後蒸留水に移すと、切り花の相対新鮮重はNAA処理およびAVG+NAA処理で著しく増加する(データ略)。
  • AVG処理およびAVG+NAA処理では、切り花あたりの開花小花数が蒸留水およびNAA処理に比べて増加する。特に、AVG+NAA処理では開花小花数4個以上の期間が最も長く維持される(図1)。
  • 切り花の品質保持期間は、蒸留水で5.6日、NAA処理で7.1日なのに対してAVG処理では12.8日、AVG+NAA処理では16.1日と著しく延長する(図2、図3)。
  • 以上から、AVGとNAAを組みあわせた処理により、トルコギキョウ切り花の品質保持期間は蒸留水の約3倍と著しく延長する。

成果の活用面・留意点

  • 切り花に処理液を吸収させた環境条件は23°C、相対湿度70%、暗黒条件で23時間、切り花を保持する環境条件は23°C、相対湿度70%、PPFD 10 μmol m-2 s-1、12時間日長とした。
  • 各処理液には抗菌剤(有効成分として5.7 mg L-1 5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2 mg L-1 2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび100 mg L-1 硫酸アルミニウムを含む抗菌剤)を加えた。
  • トルコギキョウ切り花「すみれ満開」と「一番星」でも同様の傾向が得られる。

具体的データ

トルコギキョウ切り花あたりの 開花小花数の推移前処理がトルコギキョウ切り花 の品質保持期間に及ぼす影響

蒸留水(左)およびAVG +NAA(右)処理後7 日目のトルコギ キョウ「海ほのか」切り花の様子

その他

  • 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
  • 中課題整理番号:313b
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:湯本弘子、市村一雄
  • 発表論文等:Shimizu-Yumoto H. and Ichimura K. (2010) Postharv. Biol. Technol. 56:104-107