組換え技術の理解促進ツールとしての樹脂封入標本の作製と利用
要約
遺伝子組換え技術に対する理解促進を目的に、花きの色や形を損なわずに樹脂封入するための、法律に基づいた作製体制を整備する。これにより作製する組換えトレニアの標本や教材を博物館、各種教育機関等において様々な形で展示・利用する。
- キーワード:トレニア、遺伝子組換え教材
- 担当:花き研・新形質花き開発研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-6822
- 区分:花き
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
遺伝子組換え作物の実用化には、組換え技術に対する国民理解の促進が不可欠である。組換え研究の成果である様々な花色や花形を備えた花きをいち早く一般に提示するためのツールとして、色や形を損なわずに樹脂封入できる、法律に基づく体制を整備する。これにより作製する標本を利用して組換え理解促進のための方策を検討し、普及させる。
成果の内容・特徴
- 組換え体取扱いにかかる法令等に基づき、花の色や形を変えずに樹脂封入する施設・設備・体制を整備して作製する(図1)世界で初の組換え花き樹脂封入標本である(図2)。
- 研究成果物であるトレニアを封入した標本13個にデジタルコンテンツを組み合わせた組換え教材を20セット作製し(図2)、各種教育機関での利用を進めている。
- 教材はこれまでに、25の高校・大学での実際の講義等に3ヶ月~1年利用されており、組換え技術の理解促進に貢献している(図3)。
- 横浜サイエンスフロンティア高校やつくばエキスポセンターなどで標本が常設展示されているほか、博物館、公開シンポジウム、産学官連携イベント、出前授業等で多数展示・利用されている(図3)。
成果の活用面・留意点
- 樹脂封入後はカルタヘナ法の規制の対象とはならないため、研究途上の組換え体でも展示・利用が可能である。
- 遺伝子組換えの研究成果を身近に提供することで、国民理解の促進が期待できる。
- 樹脂封入までの間は組換え体としての取扱いが必要である(国内では本件の担当者である国陽工芸株式会社でのみ作製可能)。
- 教材は今後も順次各種教育機関等での利用を進める。
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組換え標本の商業利用のための受託製作体制が2011年度中に整備される(行政手続き中)。
具体的データ



その他
- 研究課題名:花きの花色改変等新形質付与技術の開発
- 中課題整理番号:221k
- 予算区分:基盤、高度化事業、イノベーション創出事業
- 研究期間:2005~2010年度
- 研究担当者:大坪憲弘、間竜太郎、鳴海貴子、佐々木克友、四方雅仁、山口博康、阿部知子(理研)、
高木優(産総研)、西原昌宏(岩手生工研)、高根健一(インプランタイノベーションズ)、
黒田浩文(インプランタイノベーションズ)、井室昭夫(国陽工芸)、井室隆(国陽工芸)
- 発表論文等:1) Ohtsubo (2011) Plant Biotechnol. 28:113-121
2) 大坪ら (2008) 放射線と産業、119:13-17