エチレンおよび受粉によりササ系リンドウの花持ちは短縮する
要約
ササ系リンドウはエチレンに対する感受性が高く、受粉時に誘導されるエチレンにより花持ちが短縮する。
- キーワード:エチレン、受粉、花持ち、リンドウ
- 担当:加工流通プロセス・品質評価保持向上
- 代表連絡先:電話 029-838-6801
- 研究所名:花き研究所・花き研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
リンドウはエゾ系、ササ系およびそれらの交雑種が切り花や鉢物として生産されている。日本国内では盆や秋の彼岸の重要な花き品目である。さらに近年オランダ等への輸出が行われている。しかし、リンドウ切り花は国内および海外への長距離輸送時に品質が劣化しやすいため、適切な品質保持技術の開発が必要とされている。これまでに,エゾ系リンドウにおいて収穫後生理に関する研究があり、エチレンに対する感受性が低いことが示されている。一方、ササ系リンドウは花弁が開くタイプで人気が高まっているが、収穫後生理についての研究が進んでいない。そこで、本研究ではササ系リンドウの品質保持技術の開発に必要な基礎的知見を得ることを目的として、ササ系品種の花の老化とエチレンおよび受粉との関連を解析する。
成果の内容・特徴
- ササ系鉢物リンドウ品種「心美静(ここみしずか)」の開花当日の小花を収穫し、蒸留水に挿して0.5μL/Lのエチレン処理を24時間行うと、処理後の花持ちは1.2日と、無処理の8.9日に比べて著しく短縮する。さらに、2μL/Lのエチレン処理を行うと、24時間の処理中にすべての小花が萎凋する(図1)。
- 柱頭が成熟した日に、同じ品種の開花当日の花粉を用いて小花の柱頭に受粉すると、受粉後の花持ちが短縮する(図2)。
- 小花からのエチレン生成量は、受粉後1日目に増加する(図3)。受粉時のエチレン生成は主に雌蕊で行われる(図4)。
- 以上から、ササ系リンドウはエチレンに対する感受性が高く、受粉によりエチレン生成が増加し花持ちが短縮する。
成果の活用面・留意点
- リンドウ小花にエチレン処理を行った環境条件は23°C、相対湿度70%、暗黒条件で24時間である。また、エチレン処理後および受粉処理した花を保持する環境条件は23°C、相対湿度70%、PPFD 10 μmol m-2 s-1、12時間日長である。
- ササ系切り花品種「雪ほたる」においても、エチレンに対する感受性が高いことを確認している。
- 本研究によりササ系リンドウの品質保持にはエチレン阻害剤が有効である可能性が示唆される。
具体的データ
(湯本弘子、市村一雄)
その他
- 中課題名:農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発
- 中課題番号:330a0
- 予算区分:新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業、交付金
- 研究期間:2007~2011年度
- 研究担当者:湯本弘子、市村一雄
- 発表論文等:Shimizu-Yumoto H. and Ichimura K. (2012) Postharv. Biol. Technol.63:111-115.