黄花色のユリにおいて老化に伴う花弁の彩度低下は観賞価値を下げる

要約

花色の黄色いOTハイブリッド系ユリ「イエローウィン」は開花4日目から花弁カロテノイド含量の減少に伴って花弁色の彩度(鮮やかさ)が失われはじめ、観賞価値が低下する。

  • キーワード:観賞価値、彩度、ユリ、カロテノイド
  • 担当:加工流通プロセス・品質評価保持向上
  • 代表連絡先:電話 029-838-6801
  • 研究所名:花き研究所・花き研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

多くの花きは開花後数日程度で観賞価値の低下がはじまる。観賞価値を下げる要因を明らかにすることは花きの品質向上を目指す上で重要である。そこで本研究では黄花色のユリを用いて花の観賞価値、花色の変化と花弁における生理的変化との関連性を検証し、観賞価値の低下を引き起こす主な要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 黄花色のOTハイブリッド系ユリ「イエローウィン」は開花後8日目に落弁する。落弁までの8日間では花弁(内花被)の萎凋は目立たないが、退色は生じる(図1)。
  • 観賞価値の指標として鮮度評価を用いた。一般消費者45名(男性20名、女性25名、平均年齢20.1歳±0.77)を対象に見た目の鮮度を5段階(5:新鮮、4:やや新鮮、3:どちらでもない、2:やや古い、1:古い)で評価させると、値は開花1日目で最も高く、4日目から低下する(図2)。6日目の平均鮮度評価値は2.22であり、評価が「2:やや古い」に近づくと廃棄率が上昇する。
  • 黄色花弁の彩度(鮮やかさ)は4日目から低下し、鮮度評価値と類似した変化を示す(図3)。
  • 花弁の新鮮重、乾物重、厚さ、大きさ、カロテノイド含量の中で鮮度評価値や彩度と最も似た変化を示す指標はカロテノイド含量である(図4)。
  • ステップワイズ重回帰分析を行った結果、カロテノイド含量の変化は彩度の変化を説明し、彩度の変化は鮮度評価値を説明することが統計学的に示されている。
  • 開花後の「イエローウィン」において、カロテノイド含量の減少に関連した花弁彩度の低下は観賞価値を下げる主な要因の一つとなっている。

成果の活用面・留意点

  • 黄花色の「イエローウィン」において花弁の彩度は人の主観的な観賞価値を反映する指標に適している。
  • 花弁にカロテノイドを含む他品種、他品目の花きを用いて、花弁カロテノイド含量、彩度の低下と観賞価値との関連を検証する必要がある。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発
  • 中課題番号:330a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2011年度
  • 研究担当者:望月寛子、岸本早苗、和田有史、増田知尋、市村一雄
  • 発表論文等:Mochizuki-Kawai H. et al.(2012) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 81: 350-356