EOD反応を活用したスプレーギク等の省エネルギー型効率的生産技術

要約

秋冬季のスプレーギクならびにトルコギキョウ施設生産において、日没の時間帯から数時間の温度、光環境に着目した変夜温管理あるいは遠赤色光照射処理により、切り花品質の確保と使用燃料の削減および栽培期間の短縮が同時に可能である。

  • キーワード:EOD、省エネルギー、変夜温、遠赤色光、スプレーギク、トルコギキョウ
  • 担当:日本型施設園芸・花き効率生産
  • 代表連絡先:電話 029-838-6801
  • 研究所名:花き研究所・花き研究領域
  • 分類:過年度普及成果情報(2010)

背景・ねらい

日没の時間帯(end of day)から数時間における温度、光刺激による植物の応答をEOD反応と呼び、この時間帯での温度管理に着目した変夜温管理(EOD-Heating)ならびに同じ時間帯の遠赤色光照射(EOD-FR)処理による新たな生育調節技術の開発を目指す。これによって冬季生産におけるエネルギー投入量(燃料使用量)の削減を可能とする省エネルギー型効率生産技術を開発し、施設花き生産におけるコストの低減に繋げる。

成果の内容・特徴

  • スプレーギクならびにトルコギキョウ栽培において、慣行の夜温管理に比較して、EOD-Heating管理(表1、表2)では、切り花品質を確保しつつ使用燃料を30%以上削減できる(図1、表1、図2、表2)。
  • スプレーギク栽培において、切り花長を確保するための長日期間を短縮しても短日処理後のEOD-FR処理(FRを日没後3時間、0.03W/m2)により、同等の切り花品質を確保でき(図1)、栽培期間を7~10日短縮できる。
  • トルコギキョウ栽培において、EOD-FR処理(FRを日没後3時間、0.06W/m2)により、開花が促進され、冬季における栽培期間の短縮が可能である(図2)。
  • スプレーギクおよびトルコギキョウともに、EOD-Heating管理とEOD-FR処理の併用効果が認められる(図1、図2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象: スプレーギク、トルコギキョウ施設生産者
  • 普及予定地域:全国の施設スプレーギク、トルコギキョウ生産地
  • 普及予定面積:施設スプレーギク:60,100a、施設トルコギキョウ:44,800a
  • その他:
    (1) スプレーギクは和歌山県、トルコギキョウは鳥取県の気象条件下で得られた成果である。実用にあたっては、地域の気象条件と品種間差を考慮する必要がある。また、使用燃料の削減程度は気象条件や作型等によって異なる。
    (2) FR光源に波長600nm以下の光をカットしたFR蛍光灯(ピーク波長740nm)を使用した結果である。ピーク波長740nm前後のLED光源でも同等の効果を確認している。
    (3) 公設試験研究機関における適用品目拡大の検証および地域適応性試験が精力的に実施されている。
     

具体的データ

 表1~2,図1

その他

  • 中課題名:きく等切り花の生育・開花特性の解明と安定生産技術の開発
  • 中課題番号:213g
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:久松完、道園美弦、住友克彦、島浩二(和歌山県)、宮前治加(和歌山県)、川西孝秀(和歌山県)、岸本真幸(鳥取県)、前田(平尾)香那子(鳥取県)、山田真(パナソニック株式会社)、石渡正紀(パナソニック株式会社)
  • 発表論文等:
    1)川西ら(2012)園芸学研究、11:241-249
    2)道園ら(2012)園芸学研究、11:553-559
    3)住友ら(2009)花き研報、9:1-11
    4)島ら(2009)園芸学研究、8:335-340