カーネーションの全ゲノム解読

要約

カーネーション「フランセスコ」の全ゲノム解読から得られた総塩基長568.9メガ塩基対に相当するゲノムDNA配列の中には、43,266箇所の遺伝子領域が存在する。配列情報および遺伝子情報をデータベースにまとめ、公開している。

  • キーワード:カーネーション、ゲノム、シーケンス、遺伝子、DNA
  • 担当:日本型施設園芸・新形質花き創出
  • 代表連絡先:電話 029-838-6801
  • 研究所名:花き研究所・花き研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

カーネーションは世界の3大花きに数えられ、日本でも2番目に出荷本数の多い重要な花きである(3.1億本、2012年)。カーネーションには、花色等の観賞性の美しさに加え、花持ち性、病害抵抗性、生産性等重要な形質が存在する。これらの形質に関わる遺伝子単離を効率化し、ゲノム育種および遺伝子機能解析研究を加速するとともに、カーネーションの植物学的特性を明らかにするために、産学官の4機関(花き研、かずさDNA研、東京農工大、サントリーグローバルイノベーションセンター(株))が共同し、日本で生産量の多い赤色品種「フランセスコ」の全ゲノム情報を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 2種類の第2世代型シーケンサー(イルミナ社Hi-seq1000、ロシュ社GS FLX+)を用いて収集した376.6ギガ塩基対(Gbp)の配列をアセンブル(再構築)したDNA配列は、総塩基長568.9M(メガ)bpであり、推定ゲノムサイズ(622Mbp)の91%の領域に相当する。ContigN50サイズは16,644bp、ScaffoldN50サイズは60,737bpであり、ゲノム解読精度としては十分評価できる(表1)。
  • アセンブルしたゲノム配列には、165Mbpに相当する繰り返し配列が存在し、クラス1(レトロトランスポゾン型)の転位因子93,924個、クラス2(DNA型トランスポゾン)の転位因子18,154個などが含まれる(表2)。
  • 遺伝子予測の結果、今回解読されたゲノム配列上には43,266箇所の遺伝子領域が存在する。他の植物種との比較解析から、カーネーションの持つ遺伝子のほとんどが解読できたと推定される。その中には、アントシアニンなどの花色に関わる色素の合成遺伝子、花持ち性に関わるエチレン合成遺伝子、病害抵抗性に関わるNBS-LRR型遺伝子等、これまでカーネーションでは明らかになっていない多数の遺伝子が含まれる。
  • 観賞用花きにおける全ゲノムの解読は初めてである。
  • すべての配列情報および関連情報をデータベースにまとめ、かずさDNA研究所のホームページから公開している。アノテーション情報を基にしたキーワード検索およびBLAST検索が可能である(図1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:大学、公立試験研究機関、種苗会社等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全世界における試験研究に普及予定。
  • その他:全ゲノム解読により、花持ち性、病害抵抗性、生産性等重要形質の選抜マーカー開発が加速され、民間企業等によるカーネーション育種への利用が期待できる。

具体的データ

図1,表1~2

その他

  • 中課題名:分子生物学的手法による新形質花きの創出
  • 中課題整理番号:141h0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2012~2013年度
  • 研究担当者:八木雅史、山口博康、小杉俊一(かずさDNA 研)、田畑哲之(かずさDNA研)、磯部祥子(かずさDNA 研)、平川英樹(かずさDNA 研)、白澤健太(かずさDNA研)、小関良宏(東京農工大)、宮原平(東京農工大)、田中良和(サントリー)、中村典子(サントリー)
  • 発表論文等:Yagi M. et al. (2013) DNA Res. doi: 10.1093/dnares/dst053