カーネーション、カワラナデシコ雑種系統の開花の早晩性と早生性の遺伝性
要約
カワラナデシコ種間雑種4K38-6および戻し交雑系統2系統、カーネーション品種「ミズキ」、「レイチェル」は、長日下だけでなく、短日下においても開花が早く、早生性である。「ミズキ」の有する早生性は、後代に遺伝する。
- キーワード:高生産性、日長反応性、到花日数、早生性
- 担当:日本型施設園芸・新形質花き創出
- 代表連絡先:電話 029-838-6801
- 研究所名:花き研究所・花き研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
カーネーションの生産性向上のためには、切り花を早く収穫できる早生性が重要である。これまでにカワラナデシコの育種素材としての利用はカーネーションの早生化に有効であることを示したが、近年のカーネーション品種、花き研育成品種の日長反応性については明らかでなく、一層の解明が必要である。そこで、カーネーションやカワラナデシコ雑種系統を供試して、温度一定条件下で日長反応性を調査し、カーネーションの早生性育種素材を明らかにする。また、カーネーション品種中から有望素材として見いだされた「ミズキ」の有する早生性の遺伝性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- LD区(24時間日長)における到花日数は、カワラナデシコ種間雑種および戻し交雑系統では68.0~80.8日とカーネーションに比較して短い(図1左、図2)。カーネーション品種では、「ミズキ」、「レイチェル」はそれぞれ94.8日、99.0日と短く、逆に「ミラクルルージュ」では119.3日と最も長く、長日下での開花特性に差異が認められる。
- SD区(12時間日長)では、調査終了(定植から169日目)までにカワラナデシコ種間雑種4K38-6および戻し交雑系統2系統、「ミズキ」、「レイチェル」は全供試株が開花するが、「ヒトミ」、「花恋ルージュ」、「ミラクルルージュ」は全供試株が未開花であり、短日下での開花特性に大きな差異が認められる(図1右)。
- 「ミズキ」が種子親の交雑実生は「ラ・フランス」が種子親の交雑実生よりも最速開花個体の到花日数が短く、かつ、開花率(全実生に占める開花実生の割合)の上昇が早い(図3)。したがって、「ミズキ」の有する早生性は、後代に遺伝する。
- 「ミズキ」×6KS35-29の交雑実生は、「ミズキ」×「ミラクルルージュ」の交雑実生よりも最速開花個体の到花日数が短く、かつ、開花率の上昇が早いことから、「ミズキ」およびカワラナデシコの早生性遺伝子についての相乗効果が示唆される(図3)。
成果の活用面・留意点
- 花き研育成品種は特に短日下で晩生である(図1右)が、「ミズキ」やカワラナデシコ由来の早生性遺伝子を導入することにより、花持ち性や高生産性等の重要形質を併せ持つカーネーション品種育成の可能性が示され、今後の育種の基礎的知見となる。
- カーネーションの実生時の到花日数とその栄養系の到花日数との間には高い正の相関があり(Sparnaaijら, 1990)、実生選抜による早生性の育種が可能である。
具体的データ
![図1~2](../../../files/flower13_s09_1.png)
その他
- 中課題名:分子生物学的手法による新形質花きの創出
- 中課題整理番号:141h0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2009~2013年度
- 研究担当者:小野崎隆、八木雅史、棚瀬幸司
- 発表論文等:小野崎ら(2013)園芸学研究、12: 351-359