チューリップの香気成分解析と香りの分類

要約

チューリップの香気成分はモノテルペン、セスキテルペン、脂肪族化合物、および鎮静効果があるとされる3,5-ジメトキシトルエンを含む芳香族化合物である。主要香気成分の割合と生花の官能評価から、チューリップの香りは9種類に分類される。

  • キーワード:官能評価、香気成分解析、3,5-ジメトキシトルエン、チューリップ
  • 担当:加工流通プロセス・品質評価保持向上
  • 代表連絡先:電話 029-838-6801
  • 研究所名:花き研究所・花き研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

チューリップの花の香りの質は、カンキツ様の香り、ハチミツ様の香り、青臭い香りなど、バラエティに富んでいる。しかし、チューリップの香りはバラやユリなど芳香が認識されている花きの香りに比べ弱いため、一般には浸透してない。また、チューリップは香料として利用された経緯がないことから、香気成分の分析例はほとんどない。そこで、香りに特徴のある51品種のチューリップの香気成分をGC-MS を用いて解析し、チューリップの香りの質の多様性を化学的に明らかにする。さらに、香りをチューリップの新たな魅力として提案するために、チューリップの香りを香気成分解析結果と生花の官能評価により分類する。

成果の内容・特徴

  • チューリップの主要香気成分は、5つのモノテルペン(ユーカリプトール、リナロール、d-リモネン、トランス-β-オシメン、α-ピネン)、4つのセスキテルペン(カリオフィレン、α-ファルネセン、ゲラニルアセトン、β-イオノン)、6つの芳香族化合物(アセトフェノン、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、3,5-ジメトキシトルエン、サリチル酸メチル、2-フェニルエタノール)、5つの脂肪族化合物(オクタナール、デカナール、2-ヘキサナール、シス-3-ヘキサノール、シス-3-酢酸ヘキセニル)である(図1)。
  • 主要香気成分の割合と生花の官能評価から、チューリップの香りは、アニス(甘さとスパイシー感のある外国のお菓子のような香り)、ウッディ(木質系の香り)、グリーン(青臭い香り)、シトラス(オレンジなど柑橘系の香り)、スパイシー(薬のようなスパイス様の香り),ハーバル(ハーブのような香り),ハーバル・ハニー(ハーブ様からハチミツ様の香りに変化),フルーティ(ベリーやリンゴなどフルーツの香り),ローズィ(バラ様香り)の9種類に分類される(図1)。それらの香りを特徴づける成分は、図1に示すとおりである。
  • スパイシーに分類されたチューリップの主要香気成分である3,5-ジメトキシトルエンは鎮静効果があるとされ、「黄小町」、「カプリ」などに多く含まれる(図1)。

成果の活用面・留意点

  • チューリップを販売する際、香りのアピールに活用できる。
  • 芳香性育種のための指標となりうる。例えば2-フェニルエタノールに由来するバラ様の香りを育種目標とする場合には、「ダイアナ」と「モントルー」、あるいは2-フェニルエタノールを含む「モンテカルロ」などハーバル・ハニーに分類された品種を組み合わせる。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発
  • 中課題整理番号:330a0
  • 予算区分:委託プロ(農食事業)
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:大久保直美、辻俊明(富山農水総セ園研)
  • 発表論文等:Oyama-Okubo N. and Tsuji T. (2013) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 82:344-353