エチレン感受性が比較的低く日持ち性の非常に優れるカーネーション系統の開発

要約

カーネーション系統806-46bは、エチレン低生成能でかつエチレン感受性が比較的低い。切り花の日持ち日数は27.1日であり、日持ち性が非常に優れる。

  • キーワード:カーネーション、エチレン生成量、エチレン感受性、日持ち性
  • 担当:日本型施設園芸・新形質花き創出
  • 代表連絡先:電話 029-838-6801
  • 研究所名:花き研究所・花き研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

カーネーションはエチレン感受性が高い代表的な品目であり、老化にエチレンが大きく関与している。これまでに、老化時のエチレン生成量が極めて少なく、優れた日持ちの品種「ミラクルルージュ」、「ミラクルシンフォニー」を育成したが、開花直後のエチレン感受性は通常の品種とほぼ同等であり、日持ちのさらなる改善にはエチレン低感受性の形質を付与することが大きな課題である。一方、エチレン感受性簡易検定法を用いた交雑育種により、従来品種・系統よりもエチレン感受性の比較的低い系統を十数系統作出した。そこで、エチレン感受性の比較的低い系統とエチレン低生成能で日持ちの優れる系統との交配を行い、エチレン低感受性で日持ちの非常に優れるカーネーション系統を開発する。

成果の内容・特徴

  • エチレン感受性の比較的低い系統とエチレン低生成能で日持ちの優れる系統を用いて、日持ち日数やエチレン処理による花弁が萎れるまでの時間による選抜と交配を行うことにより、エチレン低生成能でかつエチレン感受性が比較的低く、日持ち性の非常に優れるカーネーション系統の開発が可能である(表1、図1)。
  • 系統806-46bの日持ち日数は27.1日であり、対照品種「ホワイトシム」の約4.4倍の非常に優れた日持ち性を示す(図2A, B、表1)。
  • 本系統はエチレン処理による花弁の萎凋が比較的生じにくく(図2C)、エチレン処理による花弁が萎れるまでの時間は、「ホワイトシム」他5品種では5.6~7.2時間であるのに対し、系統806-46bでは21.8時間と3~4倍長い(表1)。
  • 系統806-46bの老化時のエチレン生成量は極めて微量であり、さらに、エチレンの前駆物質であるACC処理後のエチレン生成量も少ない(図3)。エチレン処理後、花弁の萎凋を比較的生じにくいが、自己触媒的なエチレン生成は誘導されている(図3)。

成果の活用面・留意点

  • カーネーションの日持ち性育種において有用な情報となる。
  • 系統806-46bは、日持ち性向上のための育種素材、日持ち性に連鎖したDNAマーカー開発や老化関連遺伝子研究の材料に活用できる。

具体的データ

図1~3,表1

その他

  • 中課題名:分子生物学的手法による新形質花きの創出
  • 中課題整理番号:141h0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2014年度
  • 研究担当者:小野崎 隆、八木雅史、棚瀬幸司
  • 発表論文等:Onozaki T. et al. (2015) Hort. J. 84(1):58-68