カーネーション標準連鎖地図を利用した八重咲きに連鎖したSSRマーカーの開発

要約

カーネーション標準連鎖地図は全長969.6cM、412個のSSRマーカーが15の連鎖群で構成される。八重咲きを支配する遺伝子座(D)は、連鎖地図上の第15連鎖群に位置づけられ、近傍のSSRマーカーCES1982およびCES0212は、八重咲き形質に強く連鎖する。

  • キーワード:カーネーション、花型、八重、一重、SSRマーカー
  • 担当:日本型施設園芸・新形質花き創出
  • 代表連絡先:電話029-838-6801
  • 研究所名:花き研究所・花き研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

カーネーション(Dianthus caryophyllus L.)の八重咲きは花弁そのものが奇形的に生じる器官重複により生じる。一重咲き、八重咲きの花型はカーネーションの重要形質の一つである。本研究では、SSRマーカーを用いてゲノム全体をカバーする標準連鎖地図を作成し、連鎖解析により花型の遺伝子座を明らかにし、連鎖するSSRマーカーを開発する。

成果の内容・特徴

  • 八重咲き系統85-11および一重咲き品種「プリティファボーレ」のF2集団91個体を用いて作成した連鎖地図は、全長969.6cM、412個のSSRマーカーが基本染色体数と同じ15連鎖群から構成され、カーネーションの標準連鎖地図として利用できる(図1)。
  • F1では108個体すべてが八重咲きである。F1の系統5P95を自殖して得られたF2集団では、八重咲き73個体、一重咲き18個体であり、3:1の期待分離比に適合することから、八重咲き形質は優性の一因子(D)に支配されると推定される(図2)。
  • 連鎖解析の結果、八重咲き遺伝子座(D)は連鎖地図上の第15-2連鎖群に位置づけられる(図1)。
  • D座と同じ遺伝子座に存在する4種類のSSRマーカーを用いた遺伝子型解析の結果、CES1982とCES0212マーカーは、一重品種には無く、八重品種のみに共通する対立遺伝子を有していることから、これら二つのマーカーがD座に強く連鎖すると考えられる(図1、表1)。
  • 八重咲き(シム系と地中海系のスタンダード、スプレー)および一重咲きの品種を用いた遺伝子型解析の結果、スタンダードのうち、シム系品種はDd型、現在の主力品種である地中海系はDD型であり、スプレーはDd型とDD型が混在していると推定される(表1)。また、倍数体のナデシコ系の一重咲き品種は、八重咲きの対立遺伝子を有していない(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 今回明らかにした八重咲き形質に連鎖するSSRマーカーおよびその遺伝子座の情報は、今後のマーカー選抜および八重咲きを支配する遺伝子単離に有効である。

具体的データ

その他

  • 中課題名:分子生物学的手法による新形質花きの創出
  • 中課題整理番号:141h0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2010~2015年度
  • 研究担当者:八木雅史、山本俊哉、磯部祥子(かずさDNA研)、平川英樹(かずさDNA研)、田畑哲之(かずさDNA研)、棚瀬幸司、山口博康、小野崎隆
  • 発表論文等:
    Yagi et al. (2013) BMC Genomics 14: 734
    Yagi et al. (2014) Euphytica 198: 175-183