カンキツ新品種'サザンレッド'

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要約

‘カラ’にポンカンを交雑して育成したマンダリンである。果形は扁平,果皮は紅橙色,施設栽培においては,12月下旬に成熟期となり,減酸が早く高糖・多汁で食味・風味とも良好な施設栽培に適した高品質品種である。

背景・ねらい

高品質指向の消費ニーズに対応するため,果皮色濃橙で外観がよく,ポンカンのようにじょうのう膜が薄くて食べやすく,しかも‘カラ’のように病害および耐寒性が強く,果肉が柔軟多汁で糖度が高く風味豊かな高品質品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 昭和52年(1977)‘カラ’にポンカンを交雑して育成した品種で,昭和62年に開始された第6回系統適応性・特性検定試験に供試され,平成5年7月に‘サザンレッド’と命名され,‘ミカン農林8号’として登録・公表された。
  • 果実は80~130gで,果形は扁平。果皮は紅橙色で,完全着色期は12月上旬である。果皮は薄く,剥皮性は中。果面は滑らかで外観は良い。香りも良好である。果肉は橙色で,柔軟多汁。じょうのう膜は薄く,苦みはない。ほ場に栽植した場合は,2月下旬でも糖度は14~17度と高いが,酸も1.0~1.7%と高い(表1)。しかしながら,無加温ハウス内で栽培した場合は,12月下旬に果実重160~190g,糖度12~13度,酸1.2~1.3%となり,食味・風味ともに良好である(表2)。
  • 樹勢は比較的強く,樹姿はやや直立性。枝梢の粗密・太さは中位。とげの発生はやや多いが,樹勢が落ち着けば少なくかつ短くなる。かいよう病とそうか病にはやや弱い。
    ステムピッティング病も発生する。

成果の活用面・留意点

施設栽培に適する。‘サザンレッド’は,露地栽培では温度が不足しその特性を十分発揮することができない。しかし,無加温ハウス内で栽培すれば,果実重160~190gとなり,外観・食味ともに良好となる。留意点は,果皮が薄いため後期裂果を起こすことがあるので,適正な土壌水分管理を行う必要がある。また,陽光面が退色しやすいので,紅橙色を保つには袋掛けを行う必要がある。かいよう病やそうか病には弱い品種であることから,その防除には十分留意すべきである。さらにステムピッティング病対策としては,有効弱毒ウイルスを接種した苗木を用いることが望ましい。

 

具体的データ

写真1.‘サザンレッド’ 写真2.‘サザンレッド’

 

表1 ‘サザンレッド’の果実特性(1992)

 

表2 無加温ハウス栽培における対照品種‘マーコット’との比較

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:中生カンキツ第2次育種試験
  • 研究期間・予算区分:昭和50~平成6年・経常
  • 研究担当者:小林省藏,生山巖,池田勇,中谷宗一,吉永勝一,中村ゆり,小泉銘册,岩波徹,角谷真奈美