カキ新品種'丹麗'

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要約

落葉期の葉が鮮やかに紅葉するカキ品種‘丹麗’を育成した。落葉時の葉色は黄色味を帯びた明るい赤色で,他のカキ品種よりも着色期が早く,着色のそろいも良いことから,日本料理の彩り(飾り)として好適である。

背景・ねらい

日本料理に添えられるカキ葉は富有,横野等から採取されているが,着色がそろわない,紅葉時期が遅いなどの欠点があることから,これらに代わる品種が求められている。そこで,カキの生食用品種育成のために養成した交雑実生の中から,落葉時の紅葉が鮮やかで,着色のそろいが良く,しかも着色時期の早い系統を選抜しようとした。

成果の内容・特徴

  • 果樹試験場安芸津支場において昭和53年(1978)に‘興津2号’に‘興津15号’を交配して育成した交雑品種である。平成2年(1990)より‘140-13’の系統名でカキ紅葉特性試験に供試され,平成5年(1993)7月16日付で‘カキ農林5号’として登録・公表された。
  • 落葉時の葉の色は橙赤~濃橙赤(日本園芸植物標準色票の0713,0714)で黄色味を帯びた赤色であり,明度が高く鮮やかである(表1)。色差計測定結果でも明度を示すL値と,赤色の強さを示すa値とが高かった(表2)。着色のそろいもきわめて良い。
  • 紅葉の始まりは10月下旬で,‘伊豆’,‘前川次郎’,‘富有’等と比べて著しく早い。完全に色づいた葉が80%に達するのは11月10日前後で,落葉期も他品種と比べて早い。
  • 果実は富有よりもやや小さく,完全甘ガキで,成熟期は遅い。雌花の着生が少なく,かなりの生理的落果があり,食味もそれほど優れないことから,果実生産のための栽培には適さない。
  • 樹勢・樹の大きさともに中位で,樹姿は開張である。発育枝は長く,太さは中位,葉は卵形で富有並みの中位の大きさである(表1)。耐病性・耐虫性ともに中位で,特に問題となる病害虫は認められていない。

成果の活用面・留意点

北海道を除いて東北地方以南で栽培可能であるが,秋季の降雨量の少ない地域で鮮やかな紅葉が得られる。葉に対する風害を避けるために栽培地を選ぶとともに,風当たりの強い園地では防風林(垣)を設けることが望ましい。鮮やかに紅葉させるためには,窒素肥料を控え,ビニールマルチ等により秋季の土壌水分を少なめに管理するのがよい。

具体的データ

写真.カキ新品種‘丹麗’

 

表1 カキ‘丹麗’の樹性と葉特性(1992)

 

 

表2 落葉時の葉色の色差計測定結果(1992)

その他の特記事項

  • 研究課題名:カキ第3次,第4次育種試験
  • 研究期間・予算区分:昭和53~平成4年・経常
  • 研究担当者:山根弘康,山田昌彦,栗原昭夫,吉永勝一,永田賢嗣,小澤俊治,角利昭,平林利郎,平川信之,佐藤明彦,松本亮司,角谷真奈美