ブドウ施設栽培での作型の相違とエネルギー消費,収益性
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
ブドウ‘デラウェア’の施設栽培において,5種の作型の果実生産費を消費エネルギーから評価すると光熱動力費に特徴があり,超早期加温の約104Gcal/10aから無加温の2Gca l/10aまでの差異がある。
背景・ねらい
果樹の施設栽培は,農家経営からみて重要な位置を占めるようになった。しかし,その投下エネルギー量は露地に比べはるかに大きく,化石燃料の消費によるCO2の排出が地球温暖化に重要な影響を与えていることに注意しなければならない。そこで,今後の技術開発の参考資料とするために果樹の施設栽培におけるエネルギー消費の実態を解析した。
成果の内容・特徴
- ブドウ‘デラウェア’の施設栽培において,代表的な5種(超早期,早期,普通,準加温と無加温)の作型別に1年間の消費エネルギー構成を調査した。消費エネルギーの解析は,果実生産費の費目毎に農村物価指数による物価調整を行い,エネルギー物量換算係数を用いて算出した。
- 作型による消費エネルギーの差異の主因は,主に光熱動力費であり,超早期加温の約104Gcal/10aから無加温の2Gcal/10aまでの違いが認められた(図1)。それらの違いは,暖房用の重油消費量の差異にあり,超早期加温から普通加温では,全光熱動力費の95%,準加温で89%が重油消費により投入されるエネルギーである。
- 粗収益と投入エネルギー量はほぼ比例するが,超早期加温としても早期加温と所得の差異は少ない(図2)。しかし,普通,準,無加温栽培の所得水準は低く,1日当たり8時間で計算した家族労働報酬の差も大きい。
- 消費エネルギーが大きい超早期加温栽培では,果実単価は大きいが樹体への負担が大きく,収量も他作型に比べ低いため,粗収益の伸びが鈍化する。
成果の活用面・留意点
地球温暖化防止の視点からCO2の排出を抑制しつつ,省資源・省エネルギーを検討し,農業生産の発展を図る際の基礎資料となる。エネルギー消費実態の把握に有用である。
島根地域の‘デラウェア’栽培技術体系をもとに算出したので,品種や地域等の条件が異なるときには調整が必要である。
具体的データ


その他の特記事項
- 研究課題名:施設生産におけるエネルギー消費の推移
- 研究期間・予算区分:平成2~3年・経常
- 研究担当者:本條均,杉浦俊彦,菅谷博
- 発表論文等:ブドウ施設栽培における近年のエネルギー消費の推移,園学雑,62(別1),1993