カンキツのパクロブトラゾール処理による着花促進と葉中成分変化

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要約

高接ぎしたカンキツ実生由来の接ぎ穂にパクロブトラゾール処理をすると着花が促進された。このとき葉中全窒素はやや低下し, 全炭水化物はやや増加し, その結果,全炭水化物/全窒素比は増加した。また,ジベレリン(GA)濃度は低下し,アブシジン酸(ABA)濃度は増加した。

背景・ねらい

カンキツの幼若期間(未結実期間)は一般に長く,品種更新の際の早期成園化や育種効率の上で問題になっている。そこで,着花を促進する技術を開発するとともに樹体内でどのような成分(栄養成分及び植物ホルモン)変化があるときに着花が促進されるのかを明らかにし,着花促進技術の確立に資する。

成果の内容・特徴

  • 今村温州の2年生実生からの接ぎ穂を高接ぎして2年目の枝にパクロブトラゾール(PBZ)1,000ppmを9,10月の2回散布すると,翌春着花(0.57花/節)したが,無散布樹では,着花はほとんど認められなかった。
  • PBZ散布により葉中の全窒素はやや低下し,全炭水化物はやや増加し,その結果,全炭水化物/全窒素比はやや増加した(表1)。
  • 全遊離アミノ酸はPBZ散布によりやや低下したが,アルギニンは増加した。
  • 無機成分では,リン酸,カリ,カルシウム,マグネシウムともにやや低下した。
  • シィクワシャーを用いた同様の試験で,マルチによる乾燥処理,または,PBZ散布により着花は促進されたが,このとき,葉中GA濃度は低下し,ABA濃度は増加する傾向にあった(表2)。

成果の活用面・留意点

生長調節剤の使用や,施肥その他の栽培条件により,着花を促進する技術を開発する際の参考データとなる。なお,データは今村温州およびシィクワシャーでの事例である。

具体的データ

表1 PBZ処理が今村温州実生由来の接ぎ穂の葉中炭素,窒素(乾物%)成分に及ぼす影響

 

 

表2 マルチによる乾燥処理またはPBZ処理がシィクワシャーの実生由来の接ぎ穂の葉のABA及びGA濃度に及ぼす影響

その他の特記事項

  • 研究課題名:相転換に伴う物質代謝の動態とジュベニリティとの関連解明
  • 研究期間・予算区分:平成2~5年・特別研究(ジュベニリティ)
  • 研究担当者:内田誠,後藤明彦,鈴木勝征,山田彬雄
  • 発表論文等:ウンシュウミカン実生の高接樹へのPBZ散布が花芽の分化及び葉中成分に及ぼす影響,園学雑,61(別1),1992