リンゴ果実の軟化におけるペクチン側鎖多糖分解酵素の役割
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要約
リンゴ果実の軟化時にペクチンの側鎖多糖に対して分解活性を持つβ-D-ガラクトピラノシダーゼアイソザイムと α-L-アラビノフラノシダーゼ活性が細胞壁で増大し,それに伴いペクチン側鎖多糖からアラビノースとガラクトース残基が消失することから,これらの酵素がペクチンの可溶化と果実の軟化に関与している可能性が示唆された。
背景・ねらい
果実の軟化は収穫後の品質や鮮度低下の大きな要因であり,果実の軟化機構を解明し,軟化を引き起こす酵素や遺伝子を特定することは,遺伝子工学的手法を用いた軟化制御技術など,流通・貯蔵技術の開発に不可欠である。
成果の内容・特徴
- リンゴの軟化時のペクチン質の可溶化に伴い,ペクチン分子の側鎖多糖からアラビノースとガラクトースが分解・消失し,側鎖構造の少ないペクチンが可溶化した(表1)。
- リンゴの細胞壁画分から抽出した酵素液をヒドロキシアパタイトカラム分画したところ,4つのβ-D-ガラクトピラノシダーゼ(GA-ase)アイソザイム(I~IV)画分と1つのα-L-アラビノフラノシダーゼ(AF-ase)画分が得られた(図1)。
- GA-ase画分はいずれも精製したペクチンからガラクトースを遊離する活性を示し(表2),II~IVは軟化に伴い活性が低下したが,Iは顕著に活性が増大した(図1)。
- AF-ase画分は,精製ペクチンからアラビノースを遊離する活性を示し(表1),軟化に伴い活性が増大した(図1)。
これらの結果からβ-D-ガラクトピラノシダーゼとα-L-アラビノフラノシダーゼによるペクチン側鎖多糖の加水分解が,リンゴ果実の軟化に重要な役割を果たしていると考えられた。
成果の活用面・留意点
ここで示したデータはリンゴ果実で得られたものであり,他の果実については個々に調査する必要がある。また,酵素をさらに精製して組織内での作用様式などを検討する必要がある。
具体的データ



その他の特記事項
- 研究課題名:果実の成熟・老化に伴う軟化調節機構の解明
- 研究期間・予算区分:平成2~5年・一般別枠(収穫後生理)
- 研究担当者:吉岡博人,樫村芳記,金子勝芳
- 発表論文等:Solubilization and neutral sugar residues distribution of polyuronides during the softening in apple fruit. Journal of Japanese Society for Horticultural Science. In press. 1994.