カンキツからの水溶性抗酸化組成物の簡易調整法

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要約

食品添加物等に利用用途が広い抗酸化性組成物がカンキツ果皮,加工残渣等から水溶出で簡易・高濃度に抽出することができた。本組成物は実用的な抗酸化剤として普及することが期待される。

背景・ねらい

油脂類などを含有する食品,医薬品,飼料などは,空気中の酸素により酸化し,不快臭 を生ずるなどの品質の低下(酸敗)を招く。この時生ずる酸化物は有毒でもある。このよ うな酸化を防ぐため,従来ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシア ニソール(BHA)などの合成抗酸化活性剤が多用されてきた。しかし,近年これらの合 成抗酸化活性剤の毒性についての報告がなされ,使用に抵抗感が持たれている。このよう な事情から天然由来の抗酸化成分の需要が増加してきている。
一方,膨大なカンキツ資源を有効利用するために,その新たな利用法の開発が求められ ており,自然落下果実や摘果,市場に出すことのできない等級の低い果実,一般に生食と しないカンキツ類果実,カンキツ類の加工時にでる残渣の有効利用が必要である。
このような背景から,カンキツに含まれる抗酸化成分を有効利用するための研究を行っ た。

成果の内容・特徴

  • 抗酸化性成分を多く含むカンキツ類は 表1 に示すとおりである。
  • カンキツ類の果皮を適当な大きさに粉砕する。これに5~20倍量の水または含水アルコールを加えて抗酸化剤を抽出する。抽出は室温でもよいし加温してもよい。含水アルコールの場合アルコールの濃度は50%以下が好ましい(図1)。この抽出液を減圧濃縮 後乾燥し粉末とするか,ペースト状あるいは含水エタノール溶液とすることにより抗酸化組成物を得ることができる。
  • カンキツ類から得られた抗酸化成分はダイアイオン等の処理によって簡単に精製できる。

成果の活用面・留意点

  • カンキツを原料とする加工産業で副産物として製品化できる可能性がある。
  • カンキツの種類によっては苦味を呈するので,苦味の除去あるいは苦味のない抽出原材料を選ぶ必要がある。
  • 現在,天然の抗酸化剤としてトコフェロールなどの油溶性のものが主として用いられている。カンキツからの水溶性抗酸化組成物は油溶性の抗酸化剤が適用しにくい種類の加工品に有用な天然抗酸化剤として役立つ。

具体的データ

表1 カンキツの種類別・品種別の抗酸化活性測定結果

その他

  • 研究課題名:カンキツ類からの抗酸化成分の精製と利用
  • 予算区分:平成3~8年・大型別枠研究(新需要創出)
  • 研究担当者:小川一紀,生駒吉識,矢野昌充
  • 発表論文等:カンキツの果皮及び種子に含まれるエタノール抽出物の抗酸化性,園学雑,
                      62(別1),1993。特許出願中