キウイフルーツ「ヘイワード」が追熟しにくいわけ

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要約

キウイフルーツが完熟するには追熟に関与するエチレン生成系が誘導されなければならない。世界的に主力品種である「ヘイワード」は他品種に比較し,このエチレン生成系が誘導されにくいタイプの品種のため,追熟しにくい。

背景・ねらい

キウイフルーツ「ヘイワード」はクライマクテリック型果実とされてはいるものの,収穫後,病傷害果を除くとエチレン生成の増大が自然に起こる個体は少なく,多くは熟すことなく萎凋してしまう。キウイフルーツの追熟メカニズムを解明することによって,また近年,中国から導入されている多様なキウイフルーツ品種と,「ヘイワード」とをエチレンによるエチレン生成系の誘導の観点から比較することによって,「ヘイワード」が追熟しにくい理由を解明した。

成果の内容・特徴

  • キウイフルーツ「ヘイワード」が熟す際,追熟に関与するエチレン生成系の誘導,果肉の軟化,でんぷんの糖化,呼吸の上昇,酸の減少,香気の生成などの生理変化が起こる(図1)。これらはいずれもエチレンによって促進されるという共通点があるが,エチレンに対する反応性には違いがあった。エチレン生成系の誘導,香気の生成にはエチレンとの十分な接触が必要である。これに対して,その他の生理変化は不十分な接触でも起こりうることが認められた。しかし,追熟に関与するエチレン生成系が誘導されないと完熟果にはならない。これらのことからキウイフルーツが熟すにはエチレン生成が誘導される必要があることが明らかになった。
  • 「ヘイワード」における追熟に関与するエチレン生成系の誘導の起こりにくさを,近年中国から導入された品種と比較してみるとこのエチレン生成系の誘導の難易にはかなりの品種間差があることが認められた。「ヘイワード」が著しく誘導されにくいのに対し,いくつかの中国の品種では容易に誘導されることが明らかになった(図2)。この結果から,追熟に関与するエチレン生成系の誘導されにくさが「ヘイワード」の追熟を難しくしていることが解明された。

成果の活用面・留意点

  • エチレンに感受性の高い品種を探すことで,追熟処理の不要な品種が発見できると思われる。
  • 美味しい完熟した「ヘイワード」を得るためには,エチレン処理が不可欠である。

具体的データ

図1 「ヘイワード」におけるキウイフルーツの追熟(ライプニング)メカニズム

図2 追熟に関与するエチレン生成系が誘導されやすい品種

その他

  • 研究課題名:キウイフルーツのエチレン結合タンパクの機能の解明
  • 予算区分:平成2~6年・一般別枠研究(収穫後生理)
  • 研究担当者:矢野昌充,生駒吉識,小川一紀
  • 発表論文等:キウイフルーツの収穫後における自己触媒的なエチレン生成の特徴について,
                       園学雑,62,1993。その他