カキ新品種「太秋」の育成

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要約

カキ新品種「太秋」は,「富有」に「IIiG-16」を交雑して育成した極大果の甘ガキ品種である。果実が320g程度と著しく大きく,果肉は柔軟・多汁で高食味を呈することから,甘ガキ生産地域で広く普及することが期待される。

背景・ねらい

わが国の甘ガキ生産の60%程度を11月中下旬に成熟する晩生の「富有」が占めており,収穫・出荷労力の集中と出荷量集中による価格低下が問題である。これに対応するため,高品質で栽培しやすい早生から中生の甘ガキを育成しようとした。

成果の内容・特徴

  • 果樹試験場安芸津支場において昭和52年(1977)に「富有」に「IIiG-16」(「次郎」×興津15号(「晩御所」×「花御所」))を交雑して育成した甘ガキ品種である。平成元年(1989)より安芸津10号の系統名でカキ第4回系統適応性検定試験に供試され,平成6年(1994)8月11日付で「かき農林7号」として登録・公表された。
  • 果実の大きさは320g程度,果形は腰高な扁円形で側溝はなく,果皮色は鈍い橙色で,果面に条紋の発生が多い(表1)。
  • 果肉の褐斑は少なく,肉質はやや緻密で軟らかい。果汁が著しく多く,糖度は17%程度で,食味は良好である(表1)。
  • 成熟期は11月上旬で,「松本早生富有」と同時期であり,「富有」よりも1~2週間早く収穫できる(表1)。
  • 樹勢と樹の大きさは中位で,樹姿は開張と直立の中間である。耐病性と耐虫性は中位で,特に問題となる病害虫は認められていない。雌花の着生は「松本早生富有」や「富有」よりも少ないが,生理落果は少なく,「松本早生富有」並みの収量が得られる。

成果の活用面・留意点

太平洋側では千葉県以西,日本海側では新潟県以西で栽培可能であるが,夏季の気温が 十分に上がらない高冷地等では渋味の残る場合があるので,栽培を避ける方がよい。雄花 の着生が多く,雌花の着生がやや少ない傾向にある。雌花の着生を多くするには樹勢を強 めに維持するとともに,強い新梢を発出させるせん定法をとる必要があり,強く切り返し た予備枝をおくせん定法が有効である。条紋は,秋季に果実を過度に肥大させないように し,また,樹冠内の通風をよくすることにより,その発生と黒変を軽減することができる。

具体的データ

表1 カキ「太秋」の収穫期と果実特性

その他

  • 研究課題名:カキ第3次,第4次育種試験
  • 予算区分:昭和52~平成5年・経常研究
  • 研究担当者:山根弘康,山田昌彦,栗原昭夫,吉永勝一,永田賢嗣,平川信之,佐藤明彦,
    松本亮司,小澤俊治,角 利昭,平林利郎,角谷真奈美,岩波 宏
  • 発表論文等:カキ新品種「太秋」,園芸学会平成7年度秋季大会発表予定(1995)。