カンキツ新品種「はれやか」の育成

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要約

カンキツ新品種「はれやか」は,「アンコール」に「ポンカン」を交雑し育成したミカンである。糖度が比較的高く,ポンカンに似た芳香の強い,食味良好な有核品種である。適熟期が2月となることから,秋冬期が温暖な地域において,高品質品種としての普及が期待できる。

背景・ねらい

晩生カンキツである「アンコール」は昭和40年代に米国より導入され,各地で検討の結果,糖度の高さが注目された。しかし,露地栽培では果実肥大が不十分で,商品性のある果実生産ができなかった。また,ポンカンは食味の良いことが消費者ニーズに合致しているが,栽培性に問題がある。このように,「アンコール」には小果で酸味が強すぎる点,ポンカンにはす上がりしやすい上に収量が低い点等の改良すべきところがある。両品種の交雑により「アンコール」より早熟で,露地栽培が可能な,しかも大果でポンカン並に高品質で,す上がりしにくい生食用カンキツの育成を試みた。

成果の内容・特徴

  • 昭和47年(1972),果樹試験場口之津支場において,「アンコール」に「中野3号」ポンカンを交雑して育成された品種で,系統名は「口之津14号」である。
  • 第6回系統適応性・特性検定試験で検討され,平成6年(1994)8月11日に「はれやか」と命名され,「みかん農林9号」として登録・公表された。
  • 果実は210g程度で玉揃いはやや良。果形は扁円形。果皮は薄く,濃橙色でポンカンより濃厚。果面はやや粗いが,成り込むと滑らかになる。剥皮性は良好でポンカンに似た強い芳香がある。適熟期は2月で,食味は良好かつ濃厚。単為結果性はほとんど無く,種子数は15粒程度。
  • 樹勢は強く,樹姿は直立性。かいよう病には強い抵抗性を,そうか病にはかなり強い抵抗性を示す。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生は軽度である。

成果の活用面・留意点

「はれやか」は「アンコール」と異なり,露地栽培が可能な比較的大果の良香,良食味な中生品種である。本品種はポンカンに続き収穫でき,鳥害,果実の凍害が防げれば成熟期まで樹上に残し,順次,食味の良い果実が出荷できるため,採取労力の分散,経営の拡大の一助にもなる。
生育期の強風が無く,温暖な地域に適する。酸味が比較的強いことから,減酸には生育期が温和で,秋冬期の気温も高い地域での栽培が望ましい。樹勢が強く結実開始期が遅れる。また,生産がやや不安定である。枝梢の直立性が強いので,ポンカンの栽培法に準じ,整枝・せん定・誘引等の技術を開発して,結実を安定させる必要がある。なお,減酸がやや遅く,2月以降が適熟期であるが,浮皮の程度が増大するので,適切な採収時期を産地ごとに把握する必要がある。

具体的データ

表1 ミカン「はれやか」の果実特性

表2 ミカン「はれやか」及び対照品種の果実特性の経時的変化(口之津)

その他

  • 研究課題名:中晩生カンキツの新品種育成
  • 予算区分:昭和47~平成5年・経常研究
  • 研究担当者:七條寅之助,奥代直巳,石内傳治,生山 巌,高原利雄,松本亮司,村田広野,
                      浅田謙介,山本雅史,池宮秀和,山田彬雄,家城洋之,内原 茂,吉永勝一