弱毒ウイルス利用によるネーブルオレンジのステムピッティング病被害回避対策
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要約
カンキツトリステザウイルス強毒系統を保毒する「森田ネーブル」から熱処理により無毒個体を作出した。この無毒苗木に弱毒ウイルス数系統を接種した後,ミカンクロアブラムシで強毒ウイルスを人為的に接種し,さらにほ場での自然感染状態に置いた。11~13年経過した現在,特に弱毒ウイルスM-15A,M-16Aの2系統を接種した樹の生育,生産量,平均果重が強毒ウイルス保毒樹より優れていた。
背景・ねらい
ウンシュウミカンの生産過剰並びに消費の多様化のため,産地では中晩柑への転換が行なわれている。わが国のカンキツはカンキツトリステザウイルス強毒系統を保毒しているため中晩柑の生産性が極めて低く,品質が悪い。そこで,森田ネーブルの生産性及び品質を向上させるための方法を確立する。
成果の内容・特徴
- 熱処理によりカンキツトリステザウイルス(CTV)無毒個体を作出した。
- ほ場栽植樹のステムピッティング発生度調査並びにメキシカンライム及びユーレカレモン検定により弱毒CTV(ウイルス)数系統を収集した。
- 強毒CTVを保毒する「森田ネーブル」を熱処理することにより弱毒ウイルスを人為的に作出した。
- 無毒苗木に弱毒ウイルス数系統を接種し,ほ場に植え付けて生育などについて調査した結果,11~13年経過した現時点で特に弱毒ウイルスM-15A及びM-16Aを接種した樹の幹周,樹容積などの生育,生産量,平均果重は他の弱毒ウイルス及び強毒ウイルス接種樹に比べて優れていた。
成果の活用面・留意点
CTV弱毒ウイルスM-15A及びM-16Aの効果を長期間持続させるためには,周囲にカンキツが栽培されていない地帯か広面積に大規模に集中して植え付けるとともに,本ウイルスの媒介昆虫であるミカンクロアブラムシ,ワタアブラムシの防除を行なう。
具体的データ
その他
- 研究課題名:選抜カンキツトリステザウイルス弱毒株のほ場での有効性に関する要因解析
- 予算区分:昭和49~平成8年・経常研究
- 研究担当者:家城洋之,岩波 徹,伊藤隆男,小泉銘册,加納 健,山口 昭,山田峻一
- 発表論文等:カンキツ類のトリステザウイルス保毒状況調査及び検定,果樹試報,B8,1986。
カンキツトリステザウイルス弱毒系統探索法の改良及び熱処理による作出,
果樹試報,B13,1986。
Protective interference of mild strain of citrus tristeza virus
against a severe strain in Morita navel orange. Proceedings of 10th
IOCV, 1988.
A report of preinoculation to control stem pitting diseases of navel
orange in fields up to 1989. Proceedings of 11th IOCV, 1991.