カンキツ新品種「朱見」

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要約

カンキツ新品種「朱見」は「清見」に「セミノール」を交雑して育成したタンゴールである。果皮が赤橙色で,糖度が比較的高く食味良好な少核性の品種である。成熟期は3月で,冬季温暖な地域での栽培に適する。

  • 担当:果樹試験場・興津支場・育種第1研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:果樹
  • 専門:育種
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

「清見」は果肉が柔軟多汁でオレンジの風味があり,雄性不稔性であるなどの優れた特性を備えている。しかし,剥皮が困難で食べづらく,果皮が鈍い橙色で見栄えがしない。一方,「セミノール」は果皮が赤橙色で外観が美しいが,種子が多く,また,減酸が極遅くて酸味が強く,食味の点で問題がある。この両品種の交雑により,果皮に赤みがあり,食味良好な無核性あるいは少核性のカンキツの育成を試みた。

成果の内容・特徴

  • 昭和50年(1975)に果樹試験場興津支場において,「清見」に「セミノール」を交雑して育成した系統で,系統番号は「カンキツ興津43号」である。
  • 昭和63年(1988)から第6回系統適応性・特性検定試験において検討を続けた結果,新品種候補にふさわしいとの結論を得,平成8年(1996)8月21日に「朱見」と命名され,「タンゴール農林6号」として登録・公表された。
  • 果実は160~180g程度で,果形は短卵形である。果皮の色は赤橙色で「セミノール」に似るが,果面はやや粗い。果皮の厚さは3~4mmで,「清見」ほどではないがやや剥きにくい。果肉は橙色で比較的柔らかい。果汁の酸の減少は遅いが,糖度が比較的高いので,適熟期の食味は良好である。種子数は少なく,平均3~4粒で,無核果の割合も高い(表1,表2)。
  • 樹勢はやや強く,樹姿はやや開張性である。結果性は良い。そうか病には抵抗性があり,かいよう病に対してもかなり強く,発生しても軽度である。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生程度は軽度である。

成果の活用面・留意点

  • 成熟期が遅いので,冬季温暖で果実の低温障害を受けないところでの栽培に適する。
  • 着果量が多いと小玉果になりやすいので,適正着果を図る必要がある。
  • 果皮の日の当たる部分が退色しやすいので,袋掛け等の対策が必要である。

具体的データ

表1.「朱見」の各場所における特性

 

表2.「朱見」及び対照品種の果実特性の経時的変化

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:早生カンキツ第5次育種試験
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(昭和50年~平成7年)