カンキツ新品種「陽香」
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要約
カンキツ新品種「陽香」は,「清見」に「中野3号ポンカン」を交雑して育成したミカンである。糖度が比較的高く,ポンカンに似た芳香の強い食味良好な大果・無核品種である。適熟期が1~2月であることから秋冬期が温暖な地域に適する。
- 担当:果樹試験場・口之津支場・育種研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 部会名:果樹、九州・果樹
- 専門:育種
- 対象:果樹類
- 分類:普及
背景・ねらい
わが国のカンキツ生産量の70%以上は,年内に収穫されるウンシュウミカンであり,品種構成と熟期が片寄っている。出荷期の延長と品種の多様化のため,年明け以降に成熟する高品質な中晩生カンキツが求められている。晩生カンキツのなかで品質が優れて,単胚で交雑実生が確実に得られる「清見」を母親に,剥皮が容易で,香りが良く,食味良好な早生種である「中野3号ポンカン」を父親として交雑し,年明け以降に成熟するマンダリン(みかん)タイプで食味良好なカンキツの育成を試みた。
成果の内容・特徴
- 昭和47年(1972),果樹試験場口之津支場において,「清見」に「中野3号ポンカン」を交雑して育成した品種で系統名は「カンキツ口之津10号」である。
- 第5回系統適応性・特性検定試験で検討され,平成7年(1995)9月6日に「陽香」と命名され,「みかん農林11号」として登録・公表された。
- 果実の大きさは250~300gでマンダリンタイプとしては極めて大果である。形は扁球。果皮の色は橙色で,果面は比較的滑らかである。果皮は薄く,しかも剥皮は容易である。ポンカンに似た芳香があり,肉質は柔軟で多汁。果汁の糖度は12~13%,酸は1%程度で食味はよい。熟期は1~2月で中生品種である(表1)。無核果がほとんどで,有核果でも種子数は極めて少ない。単為結果性は強い。
- 樹勢は弱く,樹姿は開張性。かいよう病に対する抵抗性は強い。そうか病抵抗性は,ウンシュウミカンと同程度か,やや強い(表2)。
成果の活用面・留意点
- 「陽香」は年明け以降に熟する中生種であるため,温暖な地域での栽培が適する。遅くまで樹上に残すと果皮障害が発生しやすく,軽度の浮皮も認められる。果皮障害の防止には屋根かけ栽培あるいは果実の袋かけが必要である。
- 樹勢が弱いため,強勢台木への接ぎ木,樹勢維持のための施肥,有機質の保持,灌水等の肥培管理を徹底する必要がある。
具体的データ


その他の特記事項
- 研究課題名:中晩生カンキツの新品種育成
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成7年度(昭和47年~平成6年)